武蔵不破麻呂

武蔵不破麻呂について

武蔵不破麻呂（むさし の ふわまろ）は、奈良時代の日本における貴族であり、その生没年ははっきりしていません。彼の氏姓は、最初は丈部直でありましたが、後に武蔵宿禰に変更されています。官職では従五位上や左衛士員外佐を歴任しました。

出自

『続日本紀』によると、神護景雲元年（767年）に丈部直不破麻呂が武蔵宿禰を賜り、武蔵国の国造に任じられました。しかし、後代の系図では不破麻呂が足立郡司で知られる大部直（または大伴部直・大伴直）の子孫とされていますが、その真偽については疑問が残ります。

経歴

武蔵不破麻呂は武蔵国出身であり、天平宝字8年（764年）に発生した藤原仲麻呂の乱での功績が評価され、外従五位下に叙せられました。彼が武官としての職務も果たしたことから、この乱で戦果を上げたと考えられています。さらに彼は近衛員外少将の地位を経て、神護景雲元年に下総員外介も兼任し、すぐにに武蔵宿禰に改姓しました。その後、武蔵国造の地位に就いたのは特筆すべき点です。

神護景雲3年（769年）には上総員外介に昇進し、同じ年の末に内位として従五位上に昇格しました。これにより彼は朝廷内においても重要な役割を果たすようになります。

当時の日本では、貴族や官吏としての職務は多岐にわたりますが、彼は光仁朝の宝亀4年（773年）には左衛士員外佐として活動をしていました。特に、主税助や日置道形、左京大進である尾張豊人とともに大和国の佐保川堤の修築を担当していたことは彼の政治的な影響力を示しています。興味深いことに、武蔵国造を称しながら、彼は郡務を行ってはいなかったようで、実質的には京の官職を中心に活躍していたと考えられています。これは、当時の流れの中で、京官と地域の責任者を同時に務めることが困難だった背景によるものでしょう。

また、彼をモデルとしたと言われる伝説が『更級日記』に存在し、衛士として都に上り、皇女とともに武蔵国に帰還して一国の宰領として成し遂げた神話的な物語があります。

官歴

以下は不破麻呂の主な官歴です。

• - 時期不詳: 正六位上
• - 天平宝字8年（764年）10月7日: 外従五位下
• - 時期不詳: 近衛員外少将
• - 神護景雲元年（767年）8月29日: 下総員外介、近衛員外少将如故。
• - 同年12月6日:丈部直から武蔵宿禰に改姓。
• - 同年12月8日: 武蔵国造
• - 神護景雲3年（769年）6月9日: 上総員外介。
• - 同年8月5日: 従五位上（内位）
• - 宝亀4年（773年）2月8日: 見左衛士員外佐

系譜

系譜に関する記録によれば、「西角井系図」には丈部家刀自が娘を持っていたとも伝えられていますが、一部の研究者はこれを否定し、むしろ姉妹か姑との関係にあったと推測しています。

このように、武蔵不破麻呂は奈良時代の重要な貴族の一人として、政治的な舞台で数々の役割を担い、その名は現在においても古文書や歴史的な記録に名前が残る存在です。彼の人生は、当時の社会的な制度や権力の移り変わりを映し出す貴重な資料となっています。

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