武蔵丘車両基地

武蔵丘車両基地（むさしがおかしゃりょうきち）

武蔵丘車両基地は、埼玉県飯能市に位置する西武鉄道の重要な車両基地です。池袋線の東飯能駅と高麗駅の間に位置する武蔵丘信号場に隣接しており、大規模な車両検査・修繕施設である武蔵丘車両検修場もすぐ隣にあります。この車両基地は、検修場へ入出場する車両が通過する役割も担っています。

この基地では、主に車両の日常的なメンテナンスである列車検査や月検査、そして車両の清掃作業などが行われています。ただし、車両故障などの突発的なトラブルに対応するための修繕設備は備えていないため、重大な故障が発生した車両は、より包括的な修繕機能を備える小手指車両基地へ回送されて対応が行われます。

武蔵丘車両基地は、西武鉄道の横瀬車両基地の統括業務も行っていました。過去には、電気機関車であるE31形の一部検査も実施していた実績があります。また、外部から新しい車両などを搬入する際に実施される甲種輸送の回送検査については、この武蔵丘車両基地のみで行われる特別な検査です。

基地の敷地は、池袋線の線路を挟んで二つのエリアに分かれています。線路の南東側に位置するのが当初から存在していたA地区、そして北西側に後から拡張されたのがB地区です。合計の敷地面積は約41,000平方メートルに及び、最大で164両もの車両を収容することが可能です。

A地区には、10両編成の電車6本、計60両を留置できる留置線が6本設けられています。このほか、車両の入れ替えなどに使用する引上線が1本と、保線作業用の機械を留置するための線路が6本配置されています。

一方、後から整備されたB地区は、より多くの車両を収容できるよう拡張されました。こちらには、10両編成の電車7本、計74両を留置可能な留置線が7本あります。さらに、車両の検査を行うためのピット構造を持つ検査線が2本（長さ約204メートル）、車両の洗浄を行うための洗浄作業線が1本（長さ約204メートル）と車両洗浄装置が1基、そして引上線が1本整備されています。また、武蔵丘車両検修場との間を結ぶ入出場線もこのB地区に接続しています。車両の快適性を保つための汚物処理施設も敷地内に備えられています。

武蔵丘車両基地の開設には、地域の開発計画が背景にありました。1984年に西武グループが公表した「武蔵丘分譲地」造成計画と、それに伴う東飯能駅付近の複線化計画に合わせ、現在の武蔵丘信号場の位置への新駅設置構想も同時に発表されていました。この構想は地元紙にも取り上げられましたが、市民による反対運動や景気の変動により分譲地計画自体が中止となり、新駅の設置も実現には至りませんでした。現在、池袋線所属車両の行先表示器に「武蔵丘」という表示が残っているのは、このかつての新駅設置構想の名残とされています。

この車両基地の歴史を辿ると、1988年11月に輸送力増強を目的として、現在のA地区にあたる60両収容の電留線として開設されたのが始まりです。その後、1998年3月には地下鉄有楽町線への直通運転が拡大されるのに伴い、B地区として50両収容の電留線が増設され、規模が拡大されました。2000年3月には「武蔵丘車両管理所」として正式な組織となり、保谷車両管理所（現在の保谷電留線）の機能を移管しました。この時点で、電車だけでなく電気機関車や貨車なども含め、計160両を収容、組織上は多くの車両が所属する一大拠点となりました。その後、組織改編を経て2001年7月9日に現在の「池袋線車両所武蔵丘車両基地」という名称になりました。一時期は横瀬車両基地に加え山口車両基地も管轄していましたが、2004年3月には山口車両基地の管轄は小手指車両基地へ移管されています。

2024年4月1日現在、この基地には以下のような西武鉄道の車両が所属しています。

新2000系：8両編成が6本
4000系：4両編成が11本（観光列車「52席の至福」用車両を含む）
30000系：8両編成が10本、2両編成が6本
40000系：10両編成が10本

これらの車両に加え、池袋線系統で運行される他の車両基地に所属する車両も、運用によっては一時的に武蔵丘車両基地に留置されることがあります。特に、2024年3月のダイヤ改正以降は、東京メトロや東急東横線から直通してくる10両編成の車両が、それぞれ1本ずつ夜間に滞泊する運用も組まれており、他社車両の受け入れ機能も担っています。

武蔵丘車両基地は、広大な敷地と充実した設備により、池袋線系統の車両を良好な状態に保ち、日々の安定輸送を支える上で非常に重要な役割を担っています。

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