歩兵第23連隊

歩兵第23連隊とは

大日本帝国陸軍に属した歩兵連隊の一つ、歩兵第23連隊（ほへいだい23れんたい）は、明治期に編成され、昭和の終戦まで様々な戦役や事変に従軍した歴史を持つ部隊です。その前身は、1884年（明治17年）に熊本の地で組織された第1大隊にさかのぼります。その後、1886年（明治19年）8月17日には、部隊の象徴である軍旗を拝受し、正式な連隊としての体制を整えました。1888年（明治21年）5月には、新たに創設された第6師団の隷下に編入され、九州を拠点とする主要部隊の一つとなりました。

初期の実戦と平時の活動

連隊は編成後間もなく実戦を経験します。1894年（明治27年）には日清戦争に、続く1904年（明治37年）からの日露戦争にも従軍し、大陸での戦いを経験しました。これらの戦役を通じて、部隊は実戦能力を高めていきました。

戦後の平時においては、国外への駐留も経験しています。1908年（明治41年）から1910年（明治43年）にかけては韓国に駐留し、その後帰還しました。さらに、1923年（大正12年）には満州に駐留し、1925年（大正14年）に帰国しています。この帰国後、当時の宇垣軍縮による陸軍の改編に伴い、連隊はそれまでの駐屯地から宮崎県都城市へと転営しました。都城時代には、地域社会との関わりもあり、1927年（昭和2年）1月28日に小林町で発生した大火災の際には、その消火活動に出動しています。都城での駐屯期には、五十市駅が連隊の最寄り駅として利用されました。

満州事変から日中戦争へ

昭和に入り、日本が大陸での関与を深める中で、連隊は再び戦地に赴くことになります。1932年（昭和7年）12月、満州事変の拡大を受けて動員され、翌1933年（昭和8年）2月には熱河作戦に参加しました。作戦終了後の同年10月には一度帰還しますが、1937年（昭和12年）8月に日中戦争が本格化すると再び動員が下令されます。

連隊は中国大陸に派遣され、河北省の黄村に進出しました。その後、保定や石家荘といった主要都市を巡る戦闘に加わります。同年11月には杭州湾に上陸し、中国軍の抵抗を排しながら南京攻略戦にも参加しました。続く1938年（昭和13年）には、長江沿岸の要衝である武漢を巡る大規模な作戦に参加し、激しい戦闘を経験しました。1939年（昭和14年）以降も、南昌市など中国各地での戦いを継続しました。この時期、連隊主力は歩兵第45連隊などと行動を共にすることが多かったようです。

太平洋戦争と南方の激戦

太平洋戦争が始まると、戦況の変化に伴い、連隊の活動地域も南方へと移ります。1943年（昭和18年）2月、ソロモン諸島方面への転進が決定され、現在のパプアニューギニア独立国ブーゲンビル自治州に属するブーゲンビル島に上陸しました。この島で、連隊は米軍との激しい戦闘に巻き込まれます。

ブーゲンビル島の戦いは、補給が困難な中で行われた過酷な戦いでした。1943年11月頃から米軍との本格的な交戦が始まり、連隊は次第に兵力を消耗していきました。特に、この戦いにおいて、日本軍として最初に米軍と直接交戦したのは、本連隊所属の中隊（堀之内正義中尉指揮）であったと記録されています。連隊は孤立無援に近い状況下で粘り強く戦いを続けましたが、その損耗は著しいものがありました。

最後の戦いと連隊の終焉

ブーゲンビル島での主力の消耗が進む一方、国内に残されていた連隊の留守部隊は、1944年（昭和19年）に独立混成第44旅団の指揮下に入りました。そして、太平洋戦争の終盤、この留守部隊は沖縄防衛のために派遣されます。

1945年（昭和20年）6月、沖縄戦の最中に、独立混成第44旅団隷下で戦っていた歩兵第23連隊の留守部隊は、最後まで抵抗を続けた末に総員玉砕しました。ここに、歩兵第23連隊はその歴史の事実上の幕を下ろしました。沖縄戦では、同じく都城にゆかりのある歩兵第89連隊など、多くの部隊が壊滅的な打撃を受け、本連隊と共に総員玉砕した歩兵第22連隊のような運命を共にした部隊もありました。

連隊の歴史においては、特筆すべき出来事として、1943年（昭和18年）に発生した海軍甲事件に際し、連隊所属の捜索隊が連合艦隊司令長官山本五十六大将らの墜落した一式陸攻を発見し、遺体を収容したことが挙げられます。また、後の日本の内閣総理大臣となる村山富市氏も、学徒出陣により短期間ながら本連隊に入隊していました。

歩兵第23連隊は、その編成から終焉まで、日清・日露戦争、満州事変、日中戦争、そして太平洋戦争におけるブーゲンビル島や沖縄での激戦を通じて、激動の時代を戦い抜いた部隊でした。その歴史は、多くの兵士たちの犠牲の上に成り立っています。現在の都城市には、陸上自衛隊の第43普通科連隊が駐屯しており、かつての歩兵第23連隊がこの地に根差していた歴史を現代に伝えています。

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