死の歌と踊り

「死の歌と踊り」について

モデスト・ムソルグスキーが1875年に着手し、1877年に完成した「死の歌と踊り」は、死をテーマにした歌曲集です。この作品は、全4曲からなり、詩は彼の遠縁にあたる詩人アルセニイ・ゴレニシチェフ＝クトゥーゾフが手がけています。彼は当時、ムソルグスキーと同居しており、同じく彼によって作られた歌曲集『日の光もなく』などもあります。この歌曲集は、作曲家の死後にあたる1882年に出版されました。

この作品は特にそのテーマの深さから多くの注目を集めており、1982年にはドミートリイ・ショスタコーヴィチによる管弦楽編曲版が発表されました。これにより「死の歌と踊り」は、オーケストラによる演奏としても再評価されています。ショスタコーヴィチの編曲は、著名なソプラノ歌手ガリーナ・ヴィシネフスカヤに献呈されています。また、リムスキー＝コルサコフやグラズノフ、カレヴィ・アホによる別の編曲版も存在し、フィールドの多様性を楽しむことができます。

曲目の詳細

第1曲「子守歌」《Колыбельная》

この曲では、病気の幼児に「死」が訪れる様子が描かれています。母親の必死の抵抗虚しく、死は「死の子守歌」を歌いながら幼児の命を奪います。音楽的には、幼児の無垢と死の対峙が見事に表現されており、聴き手は深い悲しみに引き込まれます。

第2曲「セレナード」《Серенада》

次の曲では、病に冒された若い女性が遭遇する「死」の誘惑がテーマです。死はセレナーデを歌いながら、女性を自分のもとへと誘います。この音楽は、彼女の運命を予感させるような切なさを持っています。

第3曲「トレパーク」《Трепак》

この曲では、吹雪の夜道に立つ酔っ払った農夫と「死」の出会いが描かれています。死は老人に雪の衣を与え、ロシアの伝統舞曲であるトレパークを踊ります。この舞曲は、特に2拍子が特徴的で、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』にも登場するなど、ロシア音楽の奥深さを感じさせてくれます。悲嘆と貧困の影響を受けた環境における死の受容、として広がってゆく印象を受けます。

第4曲「司令官」《Полководец》

この曲は激戦の後の戦場が舞台となっています。閃光と轟音に満ちた夜に、司令官の姿で現れた「死」は戦死者に号令をかけます。彼は「生は汝らを引き裂くが、我は和解させる」と語り、死者を祝う宴へと誘います。この曲は1877年に作曲され、ムソルグスキーの作品の中でも特に力強い内容を持っています。この曲を最後に、彼は「もはや二度と起き上がることはない」と結び、死の普遍的な受容を表現しています。

結論

「死の歌と踊り」は、ムソルグスキーの作曲スタイルと死というテーマが織りなす深い感情が特徴的な作品です。聴く者に強烈な印象を与え、演奏される際の情景想像や感情の波を引き起こします。ショスタコーヴィチや他の作曲家による編曲も、多くの音楽愛好家に支持されています。

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