殯

殯（もがり）についての詳細

殯（もがり）は、日本の古代に行われた独特の葬送儀礼であり、死者が埋葬されるまでの長期間、遺体を納棺して仮に安置することを指します。この期間、遺体を見守り、死者との別れを惜しむと共に、その霊魂を畏れ、慰めるための儀式が行われました。また、遺体の腐敗や白骨化等の物理的変化を確認することで、死者の最終的な「死」を認識しました。

このように、殯は単に遺体を置く行為ではなく、死者を敬い、霊を慰める重要な儀礼としての意味合いがあります。そのため、殯を行う場所やその過程は、特に貴族や皇族にとって非常に重要でした。殯の期間中に遺体を安置した建物は「殯宮」（もがりのみや）と呼ばれ、特に歴代天皇においては大喪儀の一環として重要な役割を果たしていました。

歴史的背景

古代の日本文献において、殯はさまざまな形で記録されています。『古事記』や『日本書紀』ではその基礎的な概念が語られ、特に大殯という表現も見受けられますが、具体的な実施方法については詳細が欠けています。例として、天稚彦や仲哀[[天皇]]の実際の殯の逸話が挙げられ、その中で天皇の遺体がどのように扱われたのかが記されています。しかし、具体的な儀式の詳細は不明なままです。

また、平安時代に入ると、貴族層において殯が行われる対象やその規模が縮小されていったことが記されており、このことからも時代の変遷に伴う文化の変化が見て取れます。

皇室における殯の儀式

皇室の殯では、厳格な儀式が定められており、皇室喪儀令に従って行われます。天皇や皇后の死後、遺体は殯宮に移され、大喪の礼や斂葬の儀式が行われるまで様々な儀式や供物が供えられます。

殯宮における儀式には、毎日の供物とお祈りが含まれ、特定の日に執り行われるさまざまな儀礼が設けられています。例えば、殯宮日供の儀や殯宮二十日の儀などがあり、これらは祭祀の重要性を反映しています。最近では、2016年の天皇陛下のおことばの中でも殯について言及があり、その伝統は現在でも重要視されています。

殯の衰退と現代への影響

しかし、殯の儀式は大化の改新以降に施行された薄葬令によって簡素化が促進され、特に火葬の普及とともに急速に衰退しました。それでも、青森県の一部では殯に関連する風習が残存しています。たとえば、忌中の家の前に木の棒を交差させた印を飾る風習などが見られます。

また、現代の通夜が殯の名残を色濃く映し出しているとも言われています。はるか昔の殯の風習が、短縮された形で今日の葬儀に織り込まれているのです。一部の沖縄の離島では、風葬や洗骨といった殯に類似した習慣が今なお続いており、古代の文化が現在に息づいていることを示しています。

このように、殯は古代日本の非常に重要な文化的慣習であり、時代を超えてその名残が引き継がれていることは興味深い事実です。

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