皇室喪儀令

皇室喪儀令：大正天皇崩御を機に制定された皇室の葬儀規定

1926年（大正15年）、大正天皇の崩御をうけ、皇室の葬儀に関する規定を定めるため『皇室喪儀令』が制定されました。これは皇室令第11号として公布され、皇室における様々な葬儀のあり方を詳細に定めていました。しかし、昭和22年（1947年）5月2日、皇室令及附属法令廃止ノ件（皇室令第12号）により廃止されました。

令の内容：天皇・皇族それぞれの葬儀規定

皇室喪儀令は、大きく分けて天皇の喪儀と皇族の喪儀の二つの章で構成されていました。

第一章：大喪儀（天皇・太皇太后・皇太后・皇后の崩御の場合）

この章では、天皇、太皇太后、皇太后、皇后の崩御の際に執り行われる大喪儀に関する詳細な手順が規定されていました。具体的には、崩御の告知方法、追号の勅定、喪に服する期間、大喪使の設置、柩の遷宮、大喪儀の日程・場所・陵所の決定、喪主の決定、霊代の奉安と遷宮、そして大喪儀の執行方法などが定められていました。

天皇崩御の場合、宮内大臣と内閣総理大臣の連署によって直ちに公告され、崩御当日とその翌日からの5日間は朝議を廃し、大喪儀当日も同様でした。喪主は天皇でしたが、勅命によって皇太子、皇太孫、親王、王が喪主を務めることも可能でした。皇后崩御の場合は、皇太子または皇太孫が喪主となり、不在の場合は勅命により親王または王が喪主を務めました。

第二章：皇族喪儀（皇太子・皇族の薨去の場合）

第二章では、皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃、親王、親王妃、内親王、王、王妃、女王の薨去の場合の喪儀について規定されていました。

皇太子、皇太子妃、皇太孫、皇太孫妃、摂政である親王、内親王、王、女王の薨去の場合、崩御の告知、喪に服する期間（3日間）、喪儀に関する事務を掌理する喪儀司の設置、喪儀の日程・場所・墓所の決定、喪主の決定、霊代の安置と遷宮、喪儀の執行方法などが定められていました。7歳未満の皇族の薨去については、この規定は適用されませんでした。国葬の場合は、喪儀当日が朝議を廃する日となっていました。

附則：大喪儀と皇族喪儀の詳細

皇室喪儀令には、大喪儀と皇族喪儀の具体的な手順を記した附則が添付されていました。大喪儀の附則には、殯宮移御の儀から始まり、一周年祭まで、数多くの儀式が詳細に記されています。皇族喪儀の附則でも、同様の儀式が、身分に応じて、それぞれの詳細な手順とともに記されていました。

皇室喪儀令の廃止とその後

皇室喪儀令は、昭和22年の皇室令及附属法令廃止ノ件によって廃止されました。その後、皇室の葬儀に関する規定は、新たな法令や慣例によって定められることとなりました。この令は、戦前の皇室の葬儀のあり方を理解する上で重要な史料です。

まとめ

皇室喪儀令は、大正天皇崩御を契機に制定された、皇室の葬儀に関する詳細な規定を定めた法令でした。天皇・皇族それぞれの身分に応じた葬儀の様式や手順、喪主の決定、喪に服する期間、儀式の内容などが明確に定められていました。昭和22年の廃止後も、その内容は皇室の葬儀に関する歴史的資料として、重要な意味を持っています。

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