大喪儀

大喪儀：日本の天皇の葬儀に関する詳細解説

大喪儀は、日本の天皇、皇后、上皇、上[[皇后]]、太[[皇太后]]、皇太后の崩御の際に執り行われる、厳格かつ伝統的な葬儀です。古くから続く複雑な儀式であり、その様式は歴史的変遷を経て現在に至っています。本稿では、大喪儀の歴史、構成要素、そして具体的な儀式の流れについて詳細に解説します。

歴史的変遷

大喪儀の歴史は古く、古代から現代まで様々に変化を遂げてきました。古代においては、飛鳥時代までは遺体を1年間安置する殯宮（ひんきゅう）を設置する慣習がありましたが、持統天皇の時代から火葬が導入され、簡略化されて30日間が通例となりました。

奈良時代には聖武天皇の時代に仏教に則った葬儀様式が採用され、以後村上天皇まで国家的行事として行われていました。しかし、その後一条[[天皇]]以降は、崩御の事実を隠して譲位の儀式を行い、太上天皇の葬儀の形式で内々に行われるようになりました。これは、穢（けがれ）との関連から公卿の参列が制限されたことにも関係しています。また、淳和天皇以降は、在位中に崩御した天皇は土葬、太上天皇になった天皇は火葬という慣例も成立しました（ただし、例外もあります）。

平安時代以降は仏教に則った葬儀が継続され、鎌倉時代、室町時代、安土桃山時代を通して寺院で行われることが一般的でした。北朝の後光厳天皇以降は京都泉涌寺が開催地となりました。戦乱などによる影響もあったものの、後土御門天皇の葬儀記録である『明応記』は貴重な資料として残っています。江戸時代に入ると、江戸幕府の影響で再び国家的行事としての性格が強まり、多くの公卿が参列するようになりました。

明治時代以降は、神道に則った形式へと移行しました。明治維新と東京奠都を機に、天皇の葬儀は宮中で神道式で行われるようになりました。1909年（明治42年）の皇室服喪令、1926年（大正15年）の皇室喪儀令の制定により、天皇及び三后の逝去を「崩御」、葬儀を「大喪」と呼ぶことが正式に定められました。戦後の皇室典範改正によりこれらの令は廃止されましたが、慣例としてこれに準じた儀礼が現在も採用されています。戦後、日本国憲法施行後は、政教分離の原則を踏まえ、「大喪の礼」（国の儀式）と「大喪儀」（皇室の儀式）が区別されるようになりました。

大喪儀の構成要素

大喪儀は、多くの儀式から構成されています。主要な儀式には以下のようなものがあります。

櫬殿祗候（しんでんしこう）: 仮の安置所である櫬殿で遺体に別れを告げる儀式。
拝訣の儀（はいけつのぎ）: 皇族が遺体に最期の別れを告げる儀式。
御舟入の儀（おふないりのぎ）: 遺体を内棺に納める儀式。
斂棺の儀（れんかんのぎ）: 内棺を外棺に納める儀式。
殯宮祗候（ひんきゅうしこう）: 殯宮（斂葬までの間棺を安置する仮の御殿）で、皇族や関係者が霊前で弔問を行う一連の儀式。昭和天皇の大喪儀では、正殿・松の間が殯宮とされました。
殯宮移御の儀（ひんきゅういぎょのぎ）: 霊柩を櫬殿から殯宮に遷す儀式。
追号奉告の儀: 霊前に追号を奉告する儀式。
轜車発引の儀（じしゃはついんのぎ）: 出棺の儀式。
斂葬の儀（れんそうのぎ）: 埋葬までの儀式。
葬場殿の儀（そうじょうでんのぎ）: 告別式に相当する儀式。大御葬歌が奏でられ、供物が供えられ、皇族らが拝礼します。
陵所の儀（りょうしょのぎ）: 霊柩が陵の石槨に納められ、砂がかけられる儀式。
その他、陵所地鎮祭、櫬殿祓除の儀、陵所祓除の儀、霊代奉安の儀など多くの儀式が含まれます。

これらの儀式は、それぞれに厳格な手順と作法が定められています。

昭和天皇の大喪儀

昭和天皇の大喪儀は、1989年に行われ、多くの国民が深い悲しみと敬意をもって見送りました。この大喪儀は、戦後の大喪儀として、多くの点で現代における大喪儀の様式を示す重要な事例です。具体的には、殯宮での祗候の様子や、葬場殿の儀での大御葬歌の演奏などが、後の大喪儀の参考となっています。

結論

大喪儀は、日本の天皇の死を悼むだけでなく、日本の歴史と伝統を象徴する重要な儀式です。その歴史的変遷と複雑な儀式は、日本の文化と社会構造を理解する上で重要な意味を持っています。現代においても、大喪儀は国民の深い関心を集め、その厳粛な雰囲気と荘厳な儀式は、多くの人々の心に深く刻まれています。

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