空想部落

空想部落

『空想部落』は、1936年に朝日新聞夕刊で連載が開始された尾崎士郎による小説です。翌年には単行本が出版され、1939年には映画化もされました。この作品は、昭和初期に多くの作家が居住し「馬込文士村」と呼ばれた東京の大田区馬込を舞台に、そこに暮らす作家たちの生活をモデルとしたフィクションです。

あらすじ

物語の中心となるのは、作家の横川大助。彼は愛人である満子から逃れるため、多くの友人が住む牛追村から家族と共に逃亡します。数年後、横川はふらりと村に戻り、友人たちと再会。そこで彼は、安南独立運動に身を投じていたと語ります。この話を聞きつけた新聞社が座談会を企画し、横川は自身の冒険談を披露しますが、同席した専門家たちからは法螺話だと一笑に付されてしまいます。その後、横川を追う謎の人物が現れ、彼は再び姿を消します。しかし、ある日、海外で成功を収めて帰国し、家を建てたという招待状が横川から村の友人たちに届き、彼らは新居へと向かいます。そこにはどのような結末が待っているのでしょうか。

モデルと推定される実在の人物

『空想部落』に登場する人物たちは、作者である尾崎士郎の周辺にいた作家たちがモデルになっていると言われています。以下に、それぞれのモデルと推定される人物をまとめました。

横川太助 - 秋田忠義（改造社の編集者）
柿村保吉 - 吉田甲子太郎
香島満子 - 星野幸子
浮谷善兵衛 - 尾崎士郎
草上滋子 - 宇野千代
高松一郎 - 川端康成
浦野空白 - 萩原朔太郎
平飛高次郎 - 室伏高信
坂貫源平 - 榊山潤

これらの人物像を重ね合わせながら物語を読むと、より一層作品の面白さを感じることができるでしょう。

映画化

1939年12月13日には、同タイトルで映画化されました。製作は南旺映画、配給は東宝映画が担当しました。監督は千葉泰樹、主演は千田是也が務め、美術は中川一政が担当しました。映画版では、小説の世界観を映像で表現し、多くの観客を魅了しました。

スタッフ

監督：千葉泰樹
脚本：八田尚之
撮影：中井朝一
音楽：深井史郎
美術：中川一政

キャスト

横川大助：千田是也
横川葉子（大助の妻）：赤木蘭子
柿村保吉：三島雅夫
柿村美穂（保吉の妻）：原泉子
柿村令子（保吉の娘）：永井百合子
香島満子：志賀暁子
青井空三：信欣三
島岩平：松本克平
草植滋子：沢村貞子
浮谷善兵衛：殿山泰司
黒住長彦：小沢栄
平飛高次郎：薄田研二
大山萬亮：鳥羽陽之助
工藤傳蔵：押本映治
米山編集長：鶴丸睦彦
細井編集員：一木礼二
吉切少将：生方賢一郎
豊部伯爵：未鮫洲
舟田博士：大町文夫
松尾老人：中村健峰
女給春美：音羽久米子
おしげ：志賀夏江

参考文献

『空想部落』 (1955年) (角川文庫)

外部リンク

空想部落 -馬込文士村特集尾﨑士郎記念館
* 空想部落 - 日本映画データベース

『空想部落』は、昭和初期の文壇を彩った作家たちの生活を垣間見ることができる作品です。小説、映画、それぞれの形で、当時の文化や人々の暮らしを体験してみてはいかがでしょうか。

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