殿町 (川崎市)

殿町（とのまち）

神奈川県川崎市川崎区に属する町で、住居表示では殿町1丁目から3丁目までが設定されています。その面積は広大で、約170ヘクタールに及びます。

地理的には、川崎区の北東端にあたり、雄大な多摩川の右岸、河口近くに位置しています。地形は東西に細長く、北側を多摩川、南側を主要幹線道路である国道409号に挟まれています。西から順に1丁目、2丁目、3丁目と続きます。

町域の西端、1丁目は産業道路（東京都道・神奈川県道6号東京大師横浜線）や首都高速神奈川1号横羽線と接しており、首都高速の大師本線料金所やパーキングエリアの一部施設が町内に含まれています。1丁目から2丁目にかけての地域は、古くからの住宅や商店、小規模な工場が混在しており、国道沿いには飲食店も見られます。1丁目には1949年に開校した川崎市立殿町小学校があり、産業道路と国道が交わる大師河原交差点の近くには、レジャー施設であるラウンドワン川崎大師店が立地しています。

一方、3丁目は、かつて1938年から操業していたいすゞ自動車川崎工場が大部分を占めていた場所ですが、同工場は2004年までに生産拠点を移転しました。その広大な跡地は再開発の対象となり、東側はヨドバシカメラに売却され、2005年には物流拠点としてのアッセンブリーセンターが開設されました。西側部分は都市再生機構（UR）が取得し、2010年から土地区画整理事業が進められています。このエリアは、2011年に「キングスカイフロント」と名付けられ、ライフサイエンス分野の最先端研究開発拠点として整備が進んでいます。実際、2011年には実験動物中央研究所、2014年にはジョンソン・エンド・ジョンソン東京サイエンスセンター、2017年には国立医薬品食品衛生研究所やペプチドリームといった国内外の著名な研究機関や企業が相次いで進出しています。3丁目のさらに東端には、以前三愛石油のLPガスターミナルがあった跡地に、ANAのビジネスセンターやケータリングセンターが開設されています。また、3丁目の東側は多摩運河に面しており、対岸の浮島町とは浮島橋で結ばれています。この再開発エリアには、川崎キングスカイフロント東急REIホテルやビジネスヴィレッヂ川崎といった宿泊施設も整備されており、住民や来街者の憩いの場として殿町第二公園、第三公園、下河原公園の三つの公園も設けられています。

交通網も発達しており、最寄り駅は1丁目が京急大師線の大師橋駅、2丁目と3丁目が小島新田駅となります。町内には国道409号沿いに神奈川臨海鉄道浮島線、2丁目と3丁目の境界地下を南北に東海道貨物線が通っていますが、これらはいずれも貨物専用であり、旅客駅はありません。道路交通では、1丁目の北西端から多摩川を越えて東京都大田区羽田方面へ、産業道路の大師橋や首都高速横羽線の高速大師橋が架かっています。路線バスは、川崎駅や大師橋駅からキングスカイフロント、浮島橋、浮島バスターミナル方面へ向かう川崎鶴見臨港バスが町内を運行しています。また、キングスカイフロントや2022年に開通した多摩川スカイブリッジを経由し、天空橋駅へ向かう臨港バス路線も利用できます。さらに、横浜シティ・エア・ターミナルと江川一丁目を結ぶ臨港バスの高速バス路線も運行されていますが、これは主に京浜工業地帯への通勤を目的としており、平日の朝夕のみの運行で、休日や祝日は運休となります。町域の南端を東西に走る国道409号の上部には、首都高速神奈川6号川崎線が二層高架構造で整備されており、首都高速湾岸線浮島ジャンクション方面へ接続する殿町出入口が設けられています。そして、2022年には3丁目と多摩川を隔てた羽田空港の間を結ぶ新たな橋、「多摩川スカイブリッジ」が開通し、両岸間のアクセスが大幅に向上しました。

殿町の歴史は、1965年に川崎市大師河原から分かれて1丁目と2丁目が設けられたことに始まります。1967年には3丁目も設定され、その後1969年には鈴木新田や羽田、大師河原、羽田漁師町の各一部を編入し、現在の町域が概ね確定しました。2002年には、川崎殿町・大師河原地域が国の都市再生緊急整備地域に指定され、大規模な工場跡地を中心とした再開発が加速しました。

町内には、青龍山稻光院法榮寺（法栄寺）をはじめ、水神社、乳出地蔵尊、六地蔵尊といった寺社が鎮座しています。

その他の情報としては、郵便番号は210-0821で、集配業務は川崎港郵便局が担当しています。警察は川崎警察署の管轄区域に含まれ、消防に関しては川崎市消防局臨港消防署殿町出張所が町内に置かれています。

かつての工業地帯から、最先端技術が集積する研究開発拠点へと変貌を遂げつつある殿町は、多摩川や運河に面した立地、新たな交通インフラの整備と相まって、常に進化を続ける地域と言えます。

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