比島駅

比島駅：静かな山里に佇むローカル線の駅

福井県勝山市遅羽町比島に位置するえちぜん鉄道勝山永平寺線の比島駅は、のどかな山里に溶け込むように佇む無人駅です。駅番号はE22。昭和初期の開業以来、地域住民の足として、そして時代とともに変化を遂げてきました。

歴史の軌跡：激動の時代を駆け抜けて

比島駅の歴史は、1931年（昭和6年）5月1日に京都電燈越前電気鉄道の駅として開業したことに始まります。その後、1942年（昭和17年）3月には京福電気鉄道へと引き継がれ、越前線（後の越前本線）の一駅として運行を続けました。1956年（昭和31年）6月には無人駅となり、駅員の姿が見えなくなりました。

2001年（平成13年）6月、京福電気鉄道越前本線列車衝突事故による全線運行休止という大きな転換期を迎えます。この事故により比島駅も休業を余儀なくされました。しかし、2003年（平成15年）2月、京福電気鉄道からえちぜん鉄道への駅施設譲渡、そして同年10月には永平寺口駅-勝山駅間の運行再開とともに、比島駅は再び旅客を受け入れ始めました。

簡素ながらも機能的な駅舎：静寂の中に存在感

比島駅は、単式ホーム1面1線の地上駅です。無人駅であるため、駅員の姿はありませんが、簡素ながらも機能的な待合所が設置され、利用者の休憩スペースとなっています。トイレは設置されていません。周囲は静かで、山里の風景が駅舎を優しく包み込んでいます。

利用状況：地域に密着した運行

比島駅の利用状況は、近年減少傾向にあります。勝山市の統計によると、1日平均の乗車人員は少なく、日中は多くの列車が通過します。そのため、日中の停車間隔は約60分と、やや不便な面も否めません。しかし、地域住民の生活を支える重要な交通手段として、運行は続けられています。

駅周辺：九頭竜川と静かな集落

比島駅は九頭竜川に沿って位置していますが、駅周辺は民家が少なく、静かで落ち着いた雰囲気です。駅周辺には、勝山市乗合タクシー「遅羽線」比島バス停留所、浄土真宗比島道場、比島観音などがあります。これらの施設は、地元住民の生活や信仰の中心を成しています。自然豊かな環境の中で、歴史と文化が静かに息づいています。

アクセスと周辺情報：公共交通機関と徒歩

比島駅へは、えちぜん鉄道勝山永平寺線を利用します。最寄りのバス停は、勝山市乗合タクシー「遅羽線」比島バス停留所です。駅周辺は徒歩での移動が中心となります。車でのアクセスは、近隣の駐車場を利用することになります。

比島駅の未来：ローカル線の役割と可能性

比島駅は、単なる交通の拠点というだけでなく、地域の歴史や文化を伝える象徴的な存在でもあります。利用客の減少という課題を抱えながらも、地域住民の生活を支え、静かな山里に彩りを添えています。今後のローカル線の在り方、そして比島駅の役割が問われる中、その未来に注目が集まります。

参考文献

寺田裕一『日本のローカル私鉄2000』ネコ・パブリッシング、2000年8月1日
『京福電気鉄道 越前線写真帖 88年回顧録』京福電気鉄道、2003年1月31日
川島令三『【図説】日本の鉄道 中部ライン 全線・全駅・全配線 第5巻 米原駅 - 加賀温泉駅』講談社、2010年8月20日
『週刊歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄28 えちぜん鉄道 福井鉄道・北陸鉄道・のと鉄道』朝日新聞出版、2011年10月2日

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