毛利幸松丸

毛利幸松丸：早逝した若き当主、その短い生涯

毛利幸松丸は、戦国時代の安芸国（現在の広島県西部）の国人領主であった毛利氏の当主です。父は毛利興元。

生涯

永正12年（1515年）に、毛利興元の子として生まれます。しかし、翌永正13年（1516年）に父・興元が病死したため、わずか2歳で家督を継承することになりました。幼いため、叔父にあたる毛利元就と、母方の祖父である高橋久光が後見人となりました。

当初は高橋久光の発言力が強かったものの、久光の戦死後は元就が実質的な権力を握ります。永正15年（1518年）には、備後国での合戦において、粟屋赤法師（後の粟屋元親）に宛てて、その戦功を賞する感状を幸松丸名義で発給しています。ただし、当時幸松丸は4歳であったため、花押（署名）は添えられていませんでした。

大永2年（1522年）には、清神社の棟上造工において大檀那（主要な寄進者）となり、棟札に名前が記されています。

大永3年（1523年）6月、出雲の尼子経久が安芸国に侵攻すると、毛利氏は幸松丸と元就を派遣し、大内氏の拠点である鏡山城攻めに参加しました。鏡山城は陥落したものの、幸松丸は帰還中に病を発症し、同年7月15日に9歳という若さで死去しました。死因については、敵将の首実検を強いられたことが原因とする説も存在します。

幸松丸の死後、毛利氏の家督は誰が継ぐべきか重臣たちの間で議論されました。その結果、多くの重臣が元就を推挙し、同年8月10日に元就が家督を相続することになりました。

幸松丸の屋敷跡には、興元の菩提寺である秀岳院が移され、その境内に興元と幸松丸の墓所が設けられました。秀岳院は後に長門国萩（現在の山口県萩市）に移転し、廃寺となりましたが、墓は現在も毛利元就の墓所の下に存在します。

幸松丸の母方の外戚である高橋氏と毛利氏は必ずしも良好な関係ではなく、幸松丸の死後、高橋氏は元就の策略によって滅ぼされています。

肖像画

日本民藝館には、幸松丸のものとされる肖像画が所蔵されています。この肖像画は、幼い幸松丸が豪華な衣装を身につけ、脇差を差している姿を描いています。制作時期は16世紀後半から17世紀初頭と考えられており、幼くして亡くなった子供の菩提を弔うために制作された肖像画としては貴重なものです。

この肖像画は、昭和34年（1959年）に日本民藝館に寄贈され、柳宗悦によって表装が改められました。柳宗悦の記録によれば、幸松丸の肖像画は毛利元就像と共にあったとされています。また、寛保元年（1741年）には、毛利興元の菩提寺である秀岳院に、興元と幸松丸の肖像画が所蔵されていたことが確認されています。

関連作品

* NHK大河ドラマ『毛利元就』（1997年） - 北尾亘が幸松丸を演じました。

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