毛吉

毛吉（もう きつ、1426年 - 1465年）は、明代中期に活躍した官僚であり、同時に軍人としてもその名を残しました。字を宗吉といい、本貫は紹興府余姚県にあります。彼の生涯は、官僚としての道、過酷な拷問、そして反乱鎮圧での活躍、最期は戦場での死と、まさに波乱に満ちたものでした。

1454年（景泰5年）、毛吉は進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。刑部広東司主事に任じられたものの、彼は錦衣衛の長である門達に憎まれ、不当にも錦衣の獄に送られてしまいます。そこで、肉が潰れ骨が見えるほど苛烈な拷問を受けましたが、彼は決して屈することなく、生き延びました。この経験は、彼のその後の人生に大きな影響を与えたと考えられます。

1461年（天順5年）、毛吉は広東僉事に抜擢され、恵州府と潮州府の治安維持を任されることになります。彼は、その地で勢力を誇っていた豪族たちを厳しく取り締まり、民衆から大いに歓迎されました。この頃、程郷で反乱が発生し、楊輝という者が反乱軍の首領として活動していました。楊輝はもともと劇賊の羅劉寧の仲間でしたが、帰順した後に再び反乱を起こし、その勢力を拡大していました。毛吉は、この反乱鎮圧に乗り出すことになります。

1464年（天順8年）、毛吉は自ら壮士を募り、官軍に合流させました。その数700名に達し、彼はまず石坑を攻撃し、反乱軍の曾玉を討ち取りました。次に謝瑩を討ち、これも斬首しました。さらに、首領である楊輝を生け捕りにし、その勢力を一掃しました。この戦いで、およそ1400人を捕斬するという大勝利を収めました。この功績が認められ、毛吉は成化帝によって広東按察司副使に進められ、高州府、雷州府、廉州府の治安維持を任されることになります。また、広西の反乱軍が流入した際には、海康知県の王騏とともにこれを撃破し、その手腕を発揮しました。

しかし、1465年（成化元年）2月、新会県で反乱が発生し、情勢は非常に緊迫していました。毛吉は、指揮の閻華、掌県事同知の陶魯らとともに、総勢1万人の軍を率いて反乱鎮圧に赴きました。彼は、大磴で反乱軍を撃破し、その勢いに乗じて雲岫山まで追撃しました。しかし、反乱軍は陣営を放棄し、山中に逃げ込んでいました。毛吉は兵を三つに分け、夜陰に紛れて進軍させましたが、その際、潘百戸が財物の略奪に夢中になり、反乱軍の奇襲を受けて殺害されてしまいます。また、閻華も馬が躓いたところを反乱兵に殺害され、官軍は総崩れとなってしまいました。混乱の中、毛吉は退避を勧める吏の言葉を聞き入れず、最後まで奮戦しましたが、力尽き戦死しました。享年40歳でした。

毛吉の死は、朝廷に大きな衝撃を与え、彼の功績を称え、按察使の位が追贈され、諡として忠襄が贈られました。彼の息子である毛科は、父の遺志を継ぎ、進士に及第し、雲南副使にまで昇りつめました。

毛吉の生涯は、その勇猛果敢な行動と、民衆を思う気持ちで満ち溢れていました。彼は、不当な拷問にも屈せず、反乱鎮圧では先頭に立って戦い、その勇姿は後世に語り継がれています。彼の生涯は、まさに明代を代表する官僚軍人としての鏡と言えるでしょう。

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