毛塚勝利

毛塚 勝利

毛塚 勝利（けづか かつとし）氏は1945年に生まれた日本の法学者である。労働法を専門分野とし、特に労働契約論に関する研究で知られている。長年にわたり大学教育に携わり、静岡大学、専修大学を経て中央大学法学部で教授を務めたほか、日本の労働法学界の中心人物の一人として日本労働法学会代表理事を務めるなど、多方面で活躍した。

経歴と研究の始まり

栃木県栃木市に生まれた毛塚氏は、栃木県立栃木高等学校を卒業後、一橋大学法学部で法学を修めた。さらに深く研究を進めるため一橋大学大学院法学研究科に進学し、1972年に修士課程を修了した。大学院では、高名な憲法学者である杉原泰雄氏の指導を受けた。その後も研究を続け、1976年には博士課程の単位を取得して退学している。この間、労働法研究の権威である蓼沼謙一氏の薫陶を受け、後の研究の核となる労働契約論に早期から関心を寄せ、その基礎を築いた。

教育・研究活動

大学院での学びを終えた毛塚氏は、まず静岡大学にて教育・研究活動を開始し、専任講師から助教授を経て教授へと昇任した。その後、専修大学法学部に移り、ここでも教授として教鞭を執った。

2004年には中央大学法学部の教授に就任し、2015年3月に定年退職するまでの約11年間、労働法の教育と研究に尽力した。中央大学時代を含むキャリアを通じて、国際的な視点からの研究も重視しており、1992年にはドイツ・労働・技術研究所（IAT）客員研究員、1998年にはフランクフルト大学客員教授、2009年にはトレント大学客員教授を務めるなど、海外の研究機関との交流も積極的に行った。

学会活動と業績

毛塚氏は、日本の労働法学の発展に不可欠な役割を果たしてきた。特に、2002年から2003年にかけては、国内の主要な労働法研究者が集まる日本労働法学会の代表理事を務め、学術研究の推進や学会活動の活性化にリーダーシップを発揮した。研究分野は労働契約論に加え、現代社会における労働紛争の解決システムのあり方や、企業組織再編（企業買収や企業グループ内の再編など）が労働者や労使関係システムに与える影響など、実践的かつ今日的な課題にも深く切り込んでいる。これらの成果は数多くの著作にまとめられており、労働法学界における氏の貢献を示す貴重な資料となっている。

主な著書・編著には以下のものがある。

『労働法講義アシスト』（八千代出版 1997）
『個別労働紛争処理システムの国際比較』（編著 日本労働研究機構 2002）
『労働法の争点』（角田邦重, 浅倉むつ子と共編 有斐閣 2004）
『新現代労働法入門』（角田邦重, 脇田滋と共編 法律文化社 2005）
『企業組織再編における労働者保護 : 企業買収・企業グループ再編と労使関係システム』（編集 中央経済社 2010）
『労働法2＜保護法＞ 』（角田邦重 ,山田省三 ,米津孝司と共著（中央大学通信教育部 2011）
『事業再構築における労働法の役割』（編集 中央経済社 2013）
『アクチュアル労働法』（脇田滋,米津孝司共編,共著）日本評論社 2014年

また、毛塚氏の長年の功績を称え、古稀を記念して『労働法理論変革への模索─毛塚勝利先生古稀記念』という論文集が刊行されている。

定年後の活動

中央大学退職後も研究・教育活動を継続しており、2015年4月からは法政大学大学院連携社会インスティチュートの客員教授を務めている。

結論

毛塚勝利氏は、日本の労働法学界において長年にわたり重要な役割を果たしてきた研究者である。労働契約論をはじめとする基礎理論から、個別紛争や企業再編といった現代的な課題まで幅広く研究し、その成果を教育や著作を通じて学界や実務に広めた。大学教授としての人材育成、日本労働法学会代表理事としての学界運営、国際的な交流活動、そして数多くの重要な著作を通じて、日本の労働法学の発展に多大な足跡を残したその功績は、今後も高く評価されるだろう。

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