民主労働党 (韓国)

民主労働党：韓国労働運動と革新勢力の歴史における一断面

韓国の政治史において、民主労働党（民労党）は、その革新的な主張と激しい党内対立、そして最終的な統合進歩党への合流という劇的な展開で注目を集めた政党です。本稿では、民労党の創設から消滅に至るまでの歴史を、詳細に検証します。

民労党の創設とイデオロギー

1997年、大統領選挙への立候補を機に結成された「国民勝利21」を前身として、民労党は2000年1月に正式に発足しました。全国民主労働組合総連盟（民主労総）を支持母体とし、蔚山広域市など現代グループの企業城下町では、現代労組が民主労総の中核を担っていました。

党綱領では、イデオロギーを曖昧に表現することで国家保安法への抵触を回避しつつ、「労働者と民衆主体の自主的民主政府建設」や「生産手段の社会化」などを目標に掲げ、社会主義に近い政策を主張していました。その理想は「人類史に続く社会主義を継承した新しい解放共同体」と明示され、かつての日本社会党左派を彷彿とさせるものでした。綱領の作成には左派学者や80年代の理論派活動家が関与し、80年代学生運動の論理が色濃く反映されているとの見方もあります。また、米国に対しては、朝鮮半島分割や南北の軍備競争を批判するなど、反米的な姿勢も鮮明でした。

政治・経済政策

民労党は、国家保安法や国家情報院などの「抑圧的国家機構」の廃止、軍・警察・行政官僚機構の民主的改造を政治目標として掲げていました。経済政策では、富裕税の創設、財閥解体、土地の国有・公有化といった社会主義的な政策を主張し、その急進的な姿勢は社会に大きな衝撃を与えました。外交・軍事面では、在韓米軍撤退や戦時作戦統制権の還収を訴えていました。

地方選挙での躍進と院内進出

2000年の第16代総選挙では議席獲得に失敗したものの、2002年の地方選挙で躍進し、基礎自治団体長2名、広域自治体議員9名を当選させました。2004年の第17代総選挙では比例代表制の導入も追い風となり、一気に第3党に躍り出ました。これは、従来の人脈に基づく派閥政治とは異なる、政策に基づいた政党としての民労党の独自性を示すものでした。盧武鉉大統領の当選やウリ党の結成と時期が重なり、韓国政界における左派勢力の台頭を象徴する出来事となりました。議席獲得後には、以前は厳しく規制されていた街頭デモへの対応が緩和されるなど、政界進出の影響が顕著に現れました。

親北朝鮮路線と党内対立

民労党は、北朝鮮訪問や金日成生家訪問などを通じて北朝鮮との関係を強化しましたが、これは国内で「北朝鮮の操り人形」との批判を招きました。2006年の「一心会事件」では、複数の幹部がスパイ容疑で逮捕され、党は大きな打撃を受けました。2007年大統領選挙では敗北を喫し、親北朝鮮路線を採る「自主派」とこれを批判する「平等派」の対立が激化、党内は深刻な分裂状態に陥りました。

分裂と統合進歩党への合流

2008年、民労党は「新しい進歩運動」を旗揚げした新党派の離党により分裂し、第18代総選挙では議席数を減らしました。その後も党内対立は続き、代表選や選挙で様々な変化がありましたが、2011年には、進歩新党や国民参与党などとの統合に向けた動きが加速しました。しかし、統合過程においては、党内での激しい意見対立や合流条件をめぐる攻防が繰り返され、紆余曲折を経て、最終的に2011年12月15日、「統合進歩党」が結成され、民労党は歴史の幕を閉じました。

まとめ

民主労働党は、韓国労働運動を背景に誕生し、社会主義的な政策を掲げた革新政党でした。地方選挙での成功や院内進出を果たす一方で、親北朝鮮路線や党内対立、そして最終的な統合進歩党への合流という波乱に満ちた歴史を歩みました。民労党の軌跡は、韓国における労働運動や革新勢力の変遷、そして韓国政治の複雑さを理解する上で重要な視点を提供するものです。 その急進的な政策と、韓国社会に与えた影響は、現在も議論の的となっています。

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