民主政治教育連盟

民主政治教育教育連盟（みんしゅせいじきょういくれんめい）

民主政治教育連盟は、第二次世界大戦後の日本において、国民への政治教育を推進することを目的として活動した社団法人です。

新しい時代にふさわしい国民の政治的意識を育成する必要性が高まる中、主に連合国軍総司令部（GHQ）の民間情報教育局の指導と示唆を受け、日本国憲法に基づいて国民が主権者としての自覚を持ち、民主政治の原則を理解することを促すための啓発活動を行う組織として構想されました。その設立は1947年に具体化し、同年8月4日には参議院の議院運営委員会において、衆議院主導で進められていたこの連盟の結成に参議院も参加することが決定されました。その後、同年8月18日の参議院議院運営委員会では、組織の根幹となる宣言、趣旨、規約などがほぼ完成した旨が報告され、着々と設立準備が進められました。そして、同年8月21日には衆議院の議院運営委員会で、発会式を8月25日に衆議院の議場で行うことが正式に決定され、翌日の8月22日には結成式の案内が発出されました。計画通り、1947年8月25日、衆議院の議場において盛大に発会式が挙行され、民主政治教育連盟は正式に発足しました。

この連盟の最大の特徴の一つは、その組織構成にありました。時の国会議員すべてが参加するという、極めて異例かつ事実上の超党派体制を敷き、これに加えて広く民間の学識経験者や有識者も組織に加わりました。初代会長には、当時、衆議院議長という要職にあった日本社会党右派の松岡駒吉が就任し、組織の顔となりました。

活動資金も潤沢でした。特に設立直後の1947年11月19日には、参議院予算委員会第一分科会において、連盟への補助金として2600万円という当時としては巨額の経費が総理庁官房の予算に追加計上されるなど、政府からの手厚い支援を受けていました。この豊富な資金を活用し、連盟は様々な啓発活動を展開しました。例えば、映画製作会社に補助金を提供して政治や民主主義に関する教育映画を制作させ、普及に努めました。その他にも、設立から間もない1947年11月3日には、新日本建設国民運動や憲法普及会といった同時期に活動していた啓発団体と共同で「平和祭」を実施するなど、様々なイベントに関与しました。

設立翌年の1948年には組織体制を強化する動きも見られ、同年春には社団法人としての登記を完了し、法的基盤を確立しました。1948年4月には社団法人定款が作成され、標語公募計画案なども検討されました。活動実績としては、1948年5月3日には新憲法施行1周年を記念する祝典を開催し、また同年5月5日には教育映画の表彰式を赤坂離宮で行い、民主主義の精神やルールを扱った教育映画『こども議会』（丸山章治監督、東宝教育映画部制作）に民主政治教育連盟賞を授与するなど、多岐にわたる啓発事業を行いました。

しかしながら、設立からわずか1年あまりが経過した頃から、組織の必要性や活動内容に対する疑問の声、いわゆる「不要論」が内部や外部から上がり始めました。政治情勢の変化や他の啓発団体の活動との重複なども影響したと考えられます。こうした背景から、民主政治教育連盟は短命に終わり、1949年中に解散することとなりました。

解散後もその活動には後味が悪い側面も残りました。1950年3月25日、衆議院内閣委員会において、日本共産党の木村栄議員が、連盟の解散に伴う精算や支払いに不正があったのではないかとの風聞があるとして、その真相を明らかにするために連盟の公式な決算書の提出を求めるという事態が発生しました。これは、連盟が公的な資金を多く受け取っていたこと、そしてその活動が短期間で終了したことに対する疑惑の目が向けられたことを示しています。

このように、民主政治教育連盟は戦後の混乱期において、新たな憲法のもとでの国民の政治的自覚と民主主義の定着を目指し、国会議員を含む超党派体制で活動した組織でしたが、その活動期間は短く、解散時には資金に関する疑惑が浮上するなど、複雑な側面を持った存在であったと言えます。今日の視点から見ると、戦後の民主主義教育の一環として試みられた、ユニークかつ歴史的な一事例として位置づけることができるでしょう。

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