民間検閲支隊

民間検閲支隊（CCD）とは：占領下の日本における言論統制の実態

民間検閲支隊（Civil Censorship Detachment, CCD）は、第二次世界大戦後、連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）の管理下で、日本国内における検閲業務を担った機関です。GHQの参謀第2部（G-2）が所管し、日本の言論統制に深く関与しました。

CCDの設立経緯と目的

GHQは、米国の統合参謀本部の命令に基づき、日本における検閲を実行しました。その具体的な計画として「日本における太平洋陸軍民間検閲基本計画」が策定され、CCDはその実行機関として活動しました。

CCDの主な目的は以下の通りです。

民間通信の検閲管理（郵便、無電、ラジオ、電信電話、旅行者携帯文書など）
秘密情報の取得
国体の破壊、再軍備の阻止
政治組織の探索
海外との通信阻止

当初は上記が主な目的でしたが、後に新聞、出版物、放送、通信社経由のニュース、映画など、あらゆる形態の情報が検閲の対象となりました。

隠蔽された検閲

CCDによる検閲は、戦時中のように公然と行われたものではありません。GHQは、検閲の痕跡を一切残さないよう徹底し、伏字や塗りつぶしなどの措置も禁じました。そのため、国民は情報が統制されていることに気づきにくい状況に置かれました。

検閲は非常に厳しく、違反と判断された場合、発行停止や回収、裁断などの処分が下されました。GHQは、マスメディアや日本の言論を完全に掌握するため、政府による検閲を停止させ、通信社を解体に追い込むなどの強硬な措置も行いました。

CCDの組織と規模

CCDの組織は、太平洋戦争勃発後に設置され、終戦とともに廃止された米国政府機関の合衆国検閲局に準拠していました。1947年3月時点で、CCDの総員は日本人を含めて約6,000人にのぼり、1万人を超えていたとする説もあります。

検閲の基準と具体的な内容

検閲の基準となったのは「プレスコード」と呼ばれるものでした。また、検査係や検閲官は「キーログ（重要事項指示書）」や「掲載禁止、削除理由の類型」を指針として、検閲の実務を行いました。これらの類型には、軍国主義的宣伝、封建思想の賛美、占領軍批判、検閲への言及など、約30項目が列挙されていました。

具体的な検閲対象としては、以下のような記事が挙げられます。

米兵の暴行事件
米兵の私行に関して面白くない印象を与える記事
進駐軍将校に対して日本人が怨恨不満を起こす恐れのある記事
食糧事情の窮迫を誇大に表現した記事
連合軍の政策を非難する記事
国内における各種の動きにマッカーサー司令部が介在しているように印象づける記事

違反者は米軍の軍事法廷で訴追され、沖縄における強制重労働が科せられることもありました。

CCDの解体とその後

1949年10月31日、CCDの解体に伴い、映画検閲が廃止されました。しかし、GHQによる言論統制の影響は、その後も日本の社会に長く残りました。

まとめ

民間検閲支隊（CCD）は、占領下の日本において、GHQの指示のもと秘密裏に検閲を行い、日本の言論統制に大きな影響を与えた機関です。その活動は、戦後の日本の社会、文化、そして言論の自由に対する考え方に、深い爪痕を残しました。

参考文献

江藤淳『閉された言語空間 : 占領軍の検閲と戦後日本』文藝春秋〈文春文庫〉、1994年1月。ISBN 4-16-736608-8。
竹前栄治「日本のFBI─民間諜報局」『GHQ』岩波書店〈岩波新書 黄版232〉、1983年、102-106頁。NDLJP:12286826/58。

関連文献

甲斐弦『GHQ検閲官』 葦書房、1995年
* 山本武利『検閲官 発見されたGHQ名簿』 新潮社〈新潮新書〉、2021年

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