気分循環性障害

気分循環性障害 (Cyclothymia)

気分循環性障害は、軽躁的な気分と軽度な抑うつ症状が長期間にわたって交互に現れる精神的な障害です。これは、完全な躁状態や抑うつ状態ではなく、比較的軽微な症状が周期的に変動します。この障害は慢性的な双極性障害としての側面も持っており、アメリカ精神病学会が発行するDSM-5では「双極性及び関連障害」のカテゴリに分類されています。また、世界保健機関のICD-10においては持続性気分障害の一つとして位置づけられています。

特徴

気分循環性障害の患者は、明確に躁状態に至らない微妙な高揚感や、わずかな抑うつを周期的に感じることが多いです。これらの変動が日常生活に大きな影響を与えることは少ないため、本人や周囲がその無意識的な症状に気づかないことがよくあります。実際、調査によると、この障害を持つ人の15%から50%は、後に双極性障害I型やII型に進行することがあります。

診断基準

気分循環性障害を診断するためには、DSM-5に基づいた特定の基準を満たす必要があります。まず、患者は以下の条件を満たさなければなりません。

1. 期間: 症状が少なくとも2年間続かなければならず、子どもや青年の場合は1年です。
2. 具体的な症状: 軽躁症状と軽度の抑うつ症状を伴う期間が存在しなければなりません。
3. 他の障害との鑑別: 大うつ病や双極性障害の診断基準を満たさないことが求められます。
4. 精神病の排除: 統合失調症などの精神病に該当しないことが必要です。
5. 物質関連の影響: 薬物や身体的な病状によるものではないことが求められます。
6. 日常生活への影響: 社会的や職業的な機能に影響を与える程度の苦痛が存在することが必要です。

鑑別診断

気分のブレが激しい人々が多く存在しますが、著しい困難や機能障害がない場合は健康な範囲の気分の変動と見なされます。気分循環性障害と双極性障害、特に急速交代型の鑑別は複雑です。また、特に年齢が高い場合には、甲状腺や脳梗塞といった身体的な疾患も考慮する必要があります。他にも、気分変調症は長期的な軽度の抑うつが特徴であり、高揚感を伴わないのが主な違いです。さらに、境界性パーソナリティ障害との併発もあり、薬物使用歴が影響する場合もあります。

治療法

気分循環性障害の治療には、主に心理療法が用いられます。行動療法や認知行動療法は、感情の振幅を管理し、患者が日常生活を送れるよう調整することに役立ちます。薬物療法も選択肢として考えられ、リチウム塩やバルプロ酸ナトリウムといった気分安定薬が処方されることがあります。ただし、抗うつ薬は躁転を引き起こすリスクが高く、独自に投与することは推奨されていません。

まとめ

気分循環性障害は、軽度の気分変動を特徴とし、診断には厳格な基準が求められます。そのため、早期の認識と適切な治療が重要です。

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