水のいのち

概要

「水のいのち」は、日本の作曲家、髙田三郎が作曲した混声合唱組曲で、1964年に発表されました。詩は高野喜久雄によるもので、文化庁芸術祭参加作品としてTBSの委嘱により作曲され、同年度の芸術祭奨励賞を受賞しています。初演は1964年11月10日に日本合唱協会によって行われました。この作品は、高田と高野のコンビによる合唱曲として「わたしの願い」に続くものです。

この組曲は、日本の合唱曲の中でも特に人気が高く、混声合唱版の楽譜だけでも100刷を超えるほどのロングセラーとなっています。その後、女声合唱や男声合唱にも編曲され、3つのバージョンが揃うことは、当時としては異例のことでした。音楽評論家の宇野功芳は、この現象を「前代未聞」と評し、自らが指揮した女声合唱版を推薦しています。

女声合唱版は1966年11月19日に、男声合唱版は1972年4月10日にそれぞれ初演されました。また、作曲家の死後には、イタリア語バージョンや管弦楽伴奏版、弦楽伴奏版なども生まれています。

曲の構成

この組曲は、以下の5つの曲から構成されています。

1. 雨
変イ長調で、静かで穏やかな曲調で、雨が全てのものに優しく降り注ぐ様子を表しています。組曲全体の序曲のような役割を果たしています。

2. 水たまり
ト長調で、リズミカルでスケルツォ的な要素を持つ曲です。雨が命を持ち、動き出す前触れのような美しさを表現しつつ、水たまりに映る人間社会の醜さや、水面に映る空への憧れを表現しています。

3. 川
変ロ短調で、拍子が頻繁に変化する激しい部分と、穏やかな部分で構成されています。川の激流が人間の悲しみや憧れを歌い上げ、印象的なメロディーと詩が特徴です。この曲のみを単独で演奏することも多いです。

4. 海
ニ長調で、穏やかな海の様子を描いています。激しい動きはなく、全てを受け入れていく海の静けさを表現しています。終盤には、自然が人類に問いかけるようなメッセージが込められています。

5. 海よ
ニ短調で始まり、水の生命が再び空へ昇り、輪廻を繰り返す様子を表現しています。組曲の中で最も長い曲であり、起伏に富んだスケールの大きい構成が特徴です。最後はニ長調で、新たな生命の誕生を称えて終わります。

「海」の詩は詩集『独楽』に、「水たまり」「川」の詩は詩集『存在』の同名詩から改作されたものです。

参考資料

国立音楽大学附属図書館高田三郎書誌作成グループ編『人物書誌大系31　高田三郎』日外アソシエーツ、1995年

関連情報

日本の合唱作品100選
* 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団 - 「演奏ライブラリー」にて、様々な男声合唱版「水のいのち」を聴くことができます。

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