水中ロケータービーコン

水中ロケータービーコン（ULB）とは

水中ロケータービーコン（Underwater Locator Beacon, ULB）は、航空機や船舶が水没した際に、その位置を特定するために用いられる装置です。ULBは、水中で定期的に音波信号を発信し、捜索救助機関が水没した物体を効率的に発見できるよう支援します。ウォーターロケータビーコン、アコースティックビーコン、水中測位ビーコンとも呼ばれます。

ULBの仕組み

ULBは、水に浸かることで自動的に作動するよう設計されています。内部にはリチウムイオン二次電池が搭載されており、これが電源となります。ULBが水に浸かると、内蔵された「ウォータースイッチ」が通電し、音波信号（ピン）の発信を開始します。このピンは、ソナーなどの水中音響探知装置で受信できます。電池は通常6年ごとに交換が必要ですが、90日間の送信が可能なULBでは3年ごとの交換が必要です。ULBは、30日（または90日）間連続して動作するように設計されており、水深6,000mの水圧にも耐えることができます。

ULBの用途

航空機

国際民間[[航空機関]]（ICAO）の規定により、一定以上の重量を持つ航空機にはフライトレコーダーへのULB搭載が義務付けられています。ULBは、コックピットボイスレコーダー（CVR）やフライトデータレコーダー（FDR）などのフライトレコーダーに直接取り付けられるか、機体に直接取り付けられます。水没するとULBは自動的に作動し、低周波の音波パルスを発信します。エールフランス447便墜落事故の調査では、ULBが水温4度の環境下で30日間信号を送信し続けたことが確認されており、この事故を契機に、ULBの送信期間延長や、より広い範囲で受信できる周波数帯の追加が推奨されるようになりました。

船舶

国際海事機関（IMO）は、2014年7月1日以降に建造された船舶に対し、少なくとも90日間送信可能なULBの搭載を義務付けています。これにより、海難事故発生時における捜索救助活動の効率化が図られています。

その他の水中機器

ULBは、遠隔操作無人探査機（ROV）、自律型無人潜水機（AUV）、水中ドローンなど、その他の水中機器にも利用されています。これにより、これらの機器が水中で位置を見失った場合でも、容易に回収できるようになります。

技術的な詳細

ULBは、通常37.5kHzの周波数で音波を発信します。この周波数のピンガーは、通常の状態で水面から1～2km、理想的な状態では4～5kmの範囲で探知可能です。また、一部のULBは、より広範囲で受信可能な8.5kHzや9.5kHzの周波数帯も使用します。ULBの電池は、2.97Vから最大3.5Vの電圧で動作し、30日間（または90日間）の連続稼働が可能です。

注意点

国家運輸安全委員会（NTSB）の過去の調査では、ULBが誤って水に濡れて作動し、実際の事故発生時には電池切れになっていた事例が報告されています。このため、ULBの取り扱いには注意が必要です。また、欧州航空安全機関（EASA）は、2020年1月1日までに90日間以上発信可能なULBへの移行を義務付けています。

関連装置

航空機用救命無線機（ELT）
非常用位置指示無線標識装置（E-PIRB）
捜索救助用レーダートランスポンダ（SART）
ソナー

外部リンク

* L3HARRIS - 米ハリス社製ULB製品ページ

ULBは、水難事故発生時の捜索救助活動において、非常に重要な役割を果たしています。技術の進歩により、ULBの性能は向上しており、より広範囲での探知や長期間の連続稼働が可能になっています。今後も、ULBは水難事故における安全対策に貢献していくでしょう。

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