水平社博物館前差別街宣事件

水平社博物館前差別街宣事件

この事件は、2011年1月22日に発生した、川東大了が水平社博物館前で部落差別的な内容を含んだ街宣を行った出来事です。川東は当時「在日特権を許さない市民の会」の副会長を務めており、自身の歴史認識から抗議行動を決行しました。

事件の背景

水平社博物館は、部落問題の歴史を紹介するために設立され、部落解放同盟の協力を受けて運営されています。特別展示では、ハンセン病患者やアイヌ民族の人権問題に加え、2010年12月から2011年3月にかけて「コリアと日本 -『韓国併合』から100年-」という展示が行われ、日本の朝鮮植民地政策に関連する内容が紹介されました。この展示では日本政府による強制連行や慰安婦問題に関する解説も掲示されていました。

これを知った川東は、自身の歴史認識と異なる展示内容に対し「歴史の捏造」と考え、抗議を計画しました。しかし、彼は当時、他の事件で起訴されており、在特会からの支援を受けられない状況にありました。そこで、川東は2011年1月5日、日章旗を掲げるパフォーマンスを博物館内でひとりで行うなどの行動を起こしました。

事件当日の様子

事件は2011年1月22日の午後、水平社博物館前の路上で始まりました。川東は拡声器を使って激しい抗議の声を上げました。その内容は非常に過激であり、博物館の職員は初めて耳にするほどでしたが、警察からの忠告を受けて、路上に出た職員たちが川東を制止することはありませんでした。川東の街宣は1時間続き、博物館内に入って職員と口論を交わした後、現場を去ることとなりました。街宣の様子はカメラマンによって撮影され、その動画はYouTubeに投稿されました。

事件後の対応

事件の影響を受けた水平社博物館は、3月に解放同盟が発行する機関紙でこの事案に言及し、奈良地方法務局に差別事件として申立を行う方針を示しました。しかし、その後特に具体的な糾弾は行われず、結果的に民事訴訟のみが提起されることになりました。

2011年8月22日、水平社博物館は川東に対して1000万円の慰謝料を求める民事訴訟を奈良地裁に起こしました。川東は「穢多・非人は蔑称ではない」と主張しましたが、2012年に奈良地裁は川東に150万円の慰謝料支払いを命じました。この判決は後に確定し、双方が控訴しなかったため、終了しました。

その後、水平社博物館は川東に対し賠償金の支払いや動画の削除を求めましたが、川東は生活苦を理由に月1000円の支払いしか行わず、動画については削除は無意味だと主張しました。最終的に、博物館は川東の財産に対する差し押さえを実行し、遅延損害金などを回収しました。

まとめ

水平社博物館前差別街宣事件は、歴史認識の対立が引き起こした抗議活動がどのような影響を及ぼすかを映し出した出来事でした。川東の言動は、部落問題における根深い差別の実態を再浮上させ、社会全体への警鐘となったのです。

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