水晶城 (安芸国)

水晶城：安芸国に聳え立つ難攻不落の山城

水晶城は、現在の広島市佐伯区石内に位置していた山城です。かつて安芸国佐西郡に存在し、その堅牢さから難攻不落の城として知られていました。

名称の由来と城の構造

「水晶城」という名称は、この城の周辺で水晶が産出されたことに由来すると言われています。文献においては、「石道本城」や「石道新城」といった呼称も見られます。ただし、これらの呼称が具体的にどの城を指すのかについては、研究者の間で異なる見解が存在します。

城の構造としては、標高132mの山の頂上部を主郭とし、そこから麓へ向かって曲輪が連なる連郭式山城です。最大の特徴は、山全体に曲輪や堀切が配置されていることで、非常に広大な城域を有し、多くの兵士が駐屯できるほどの規模でした。眼下には山陽道を見下ろすことができ、交通の要衝としての役割も担っていました。

歴史

源平合戦の頃

平安時代末期の治承・寿永の乱（源平合戦）の頃には、佐々木国正が源氏方として水晶城に籠り、平氏に抵抗したと伝えられています。

戦国時代

時代が下って戦国時代に入ると、水晶城は安芸西部に勢力を拡大していた周防国の大内氏の支配下に入ります。永正5年（1508年）に厳島神主家の当主・藤原興親が京都で死去すると、大内義興は厳島神主家の小幡興行が治める所領を接収しました。その後、永正12年（1515年）に武田元繁の侵攻によって一時落城しますが、大内氏によって奪還され、永正15年（1518年）には大内氏の重臣である杉甲斐守が城番となります。

大永3年（1523年）には、厳島神主家の一族である友田興藤が家督相続に不満を持ち、謀反を起こして水晶城を攻撃。杉甲斐守は討ち取られ、城は一時的に占拠されます。乱の鎮圧後、麻生鎮里が新たに城番として入城し、周辺地域の支配にあたりました。

毛利氏の支配と廃城

天文23年（1554年）に、安芸国の戦国大名・毛利元就と、大内氏の実権を握っていた陶晴賢が敵対すると、毛利軍は水晶城を攻撃し、麻生鎮里は降伏しました。毛利氏が安芸国を掌握すると、水晶城よりも海に面した桜尾城が重要視されるようになり、また、城の規模が大きすぎるため守備に多くの人員を要することがネックとなり、水晶城は廃城となりました。

まとめ

水晶城は、その堅牢な構造と交通の要衝という立地から、戦国時代には様々な勢力の間で争奪戦が繰り広げられました。最終的には毛利氏の支配下に入りますが、より戦略的に重要な桜尾城の存在や、城の規模の大きさから維持が困難となり、その歴史に幕を閉じました。現在ではその遺構が、往時の姿を静かに物語っています。

参考文献

「山陽自動車道建設に伴う埋蔵文化財発掘調査報告」広島県埋蔵文化財調査センター（1986年）
「有井城跡発掘調査報告」広島市歴史科学教育事業団（1993年）

関連項目

* 厳島の戦い

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