水木しげるの古代出雲

水木しげるの古代出雲

『水木しげるの古代出雲』は、漫画家・水木しげるが、古代出雲を舞台に描いた作品です。2012年に書き下ろし単行本として刊行されました。本書は、『古事記』や『出雲国風土記』などの神話をベースに、独自の視点と解釈を加えて、出雲の歴史と人々の物語を紡ぎ出しています。水木しげるならではの妖怪的な表現や、歴史への深い考察が魅力です。

概要

本書は、オオクニヌシを主人公に、出雲の建国から国譲りまでの出来事を描いています。水木しげるは、最近の発掘調査の成果も取り入れながら、古代出雲の歴史を独自に解釈しています。特に、国譲りの場面では、神話的な美談だけでなく、当時の政治的な駆け引きや人々の複雑な感情をリアルに描写しようと試みています。また、水木作品でお馴染みの目玉おやじも登場し、物語の解説役として、水木しげると共に物語を盛り上げます。

水木しげるは、鳥取県で幼少期を過ごしたことから、隣県である出雲に対して特別な思い入れがありました。自身のルーツが隠岐の島にあると語り、初めて島根を訪れた際には、前世から訪れていたような不思議な感覚を覚えたと言います。30年ほど前から出雲の無念を訴える夢を頻繁に見るようになり、ライフワークとして出雲を題材にした作品を「描かないと死ねない」とまで語っていました。

あらすじ

物語は、高天原を追放されたスサノオが、ヤマタノオロチを退治し、出雲を支配するところから始まります。スサノオは、鉄を手に入れたことで力を増し、出雲王朝を築き上げます。その後、時代は進み、スサノオの6代目の子孫であるオオクニヌシが、出雲の王となります。しかし、オオクニヌシは、王となるまでに数々の試練を経験します。

オオクニヌシは、因幡へ旅立つ兄弟（八十神）たちに同行させられ、荷物持ちをさせられるなど、当初は苦労を強いられます。物語は、オオクニヌシが試練を乗り越え、出雲の王として成長していく過程を丁寧に描いています。また、国譲りの場面では、アマテラスとの交渉や、その後のオオクニヌシの運命が描かれます。

主な登場人物

オオクニヌシ: スサノオの子孫で、出雲の王。数々の試練を乗り越え、国を治める。スセリビメをはじめ、多くの妻を持ち、多数の子をもうける。アマテラスとの国譲りの後、黄泉の国へ退隠する。
アマテラス: イザナギの子で、高天原を治める神。スサノオを追放し、オオクニヌシに国譲りを迫る。
スサノオ: イザナギの子。高天原から追放され、出雲に降り立つ。ヤマタノオロチを退治し、出雲を支配する。後に根の国の王となり、オオクニヌシに試練を与える。
スセリビメ: スサノオの娘で、オオクニヌシの正妻。
スクナビコナ: カミムスビの子。オオクニヌシと協力して国造りを進める。温泉の開拓者としても知られる。
タケミカヅチ: アマテラスの命で出雲に派遣され、国譲りを要求する。オオクニヌシの息子たちを服従させる。
水木しげる、目玉おやじ: 物語の狂言回しや解説役として随所に登場。

関連事項

島根県立古代出雲歴史博物館では、過去に水木しげるの作品展が開催され、本作に関連する展示も行われました。
本作は、単行本として複数回刊行されています。

書誌情報

『水木しげるの古代出雲』 角川書店、2012年3月、ISBN 978-4-04-110142-1
『水木しげるの古代出雲』 角川書店〈角川文庫〉、2015年6月、ISBN 978-4-04-103007-3
『水木しげるの異界旅行記／水木しげるの古代出雲』 講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2017年12月、ISBN 978-4-06-377595-2

外部リンク

げげげ通信 水木しげるの古代出雲
島根県立古代出雲歴史博物館

『水木しげるの古代出雲』は、古代出雲の歴史と神話を、水木しげるならではの視点で描いた傑作です。出雲の歴史に興味がある方はもちろん、水木しげるファンにもおすすめの一冊です。

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