水木しげるの遠野物語

『水木しげるの遠野物語』は、漫画家・水木しげるが、柳田國男の著書『遠野物語』を原作として描いた漫画作品です。この作品は、小学館の漫画雑誌『ビッグコミック』にて2008年から2009年にかけて連載されました。

概要

『遠野物語』は、岩手県遠野地方に伝わる民話や伝承をまとめたもので、全119話（一部を除く）から構成されています。水木しげるは、この物語を独自の視点と画風で漫画化し、妖怪や不思議な出来事を生き生きと描き出しました。単行本は2010年に発売され、その魅力から多くの読者に支持され、重版を重ねるロングセラーとなっています。2022年には、水木しげる生誕100周年を記念して10万部を突破し、2021年には英語版も出版されるなど、国内外で高い評価を得ています。

遠野物語100周年記念

2010年は『遠野物語』発刊100周年の記念すべき年であり、その記念事業の一環として、本作の単行本が刊行されました。また、記念事業のオフィシャルサポートキャラクターには、本作に登場する河童が選ばれ、「かたるくん」と命名されました。このキャラクターは、イベントなどで活躍し、関連商品も販売されました。

さらに、遠野市立博物館のリニューアルに伴い、本作を原作としたアニメーション作品が館内で上映されることになりました。同博物館では、本作の原画展も開催され、作品の世界観をより深く体験できる機会を提供しています。

主な登場人物・エピソード

本作には、さまざまな人物や妖怪、そして奇妙な出来事が登場します。以下に、主な登場人物とエピソードをいくつか紹介します。

水木しげる: 本作の狂言回しとして登場し、物語を語り部として進行させます。
柳田國男: 民俗学者であり、『遠野物語』の著者として登場します。
佐々木喜善: 遠野出身で、柳田國男に遠野の民話を伝えた人物です。
山女: 山に現れる巨大な女性で、猟師などが遭遇する妖怪。失踪した娘が山女として発見されることもあります。
山男: 山に入った娘をさらう大男。早池峰では眠っている姿が目撃され、傍には大きな草履があったといいます。
寒戸の婆: 失踪した娘が老婆の姿で30年ぶりに帰ってくるが、すぐにまた姿を消してしまうという話です。
オクナイサマ: 旧家で祀られる神で、家の神、作の神としての性格を持ちます。
ザシキワラシ: 土淵村での話が多く、山口孫左衛門の家には2人の童女のザシキワラシがいたとされます。
経立: 動物が年を経て怪しい能力を身につけ、怪異を起こす現象。本作では猿と狼が登場します。
河童: 佐々木喜善の曾祖母が幼少の頃に目撃したとされ、遠野の河童は顔が赤いといいます。
マヨイガ: 山奥で偶然見つける立派な家で、中には誰もいない。家の中のものを持ち出すと長者になれるという話です。
オシラサマ: ある娘が馬と夫婦になるが、怒った父親が馬の首を切り落とす。すると、娘と馬の首が天に昇り神になったという伝説です。
天狗: ある若者が遭遇し、返り討ちにされた後、手足を抜き取られた死体で発見されるという恐ろしい話です。
山神: 鳥御前と呼ばれる翁が、続石の陰で赤い顔の男女に遭遇。からかった為、翁は寝込み3日後に息を引き取ったという話です。
狐: 菊池菊蔵が友人と相撲を取ったところ、持っていた餅がなくなっていた。狐に化かされたという話です。
雪女: 小正月の夜などに童子を引き連れて現れるとされる雪の妖怪です。
ゴンゲサマ: 神楽舞の組毎に備えられている木彫の像。神楽組が宿泊先で火事に遭うが、ゴンゲサマが火を喰ったという話です。
ヤマハハ: 娘が留守番をしていると家に侵入してくるという妖怪。娘は周りの人に助けられて難を逃れます。

アニメ版

遠野市立博物館では、『遠野物語』のエピソードから『河童淵』と『オシラサマ』の2本のアニメーション作品（各6分程度）が常設上映されています。

スタッフ

プロデューサー：ギャルマト・ボグダン
監督：石黒育
脚本：成田良美
音楽：和田薫
アニメーション制作：東映アニメーション
制作：小学館集英社プロダクション

キャスト

羽佐間道夫
野沢雅子

単行本

『水木しげるの遠野物語』（ビッグコミックススペシャル、2010年1月、ISBN 978-4-09-182879-8）
『水木しげるの遠野物語／水木版妖怪大戦争』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2017年5月、ISBN 978-4-06-377594-5）

外部リンク

水木しげるの遠野物語 - 小学館
 遠野物語発刊100周年記念　妖怪セミナーin遠野
早池峰バス株式会社 - 水木しげるデザインのラッピングバスが運行。

もう一度検索

水木しげるの遠野物語