水波朗

水波 朗について

水波 朗（みずなみ あきら）は、1922年10月3日に滋賀県彦根市に生まれ、2003年7月31日に逝去した日本を代表する法学者です。彼の専門分野は法哲学であり、日本の法学界において重要な影響を与えました。九州大学の名誉教授である水波は、長いキャリアを通じて多くの法学に関する著作を残しました。

初期の人生と学問の道

水波は1946年、九州帝国大学法文学部法科を卒業し、同大学院の特別研究生となります。その後1949年には九州大学法学部の助教授に就任しました。当初は憲法学に取り組んでいましたが、その後、研究の焦点を公法学や法哲学へと移していきます。彼はトマス主義の立場を基盤に研究を進めました。

思想的背景

水波は、トマス主義の他にもアルフ・ロスやハンス・ケルゼン、カール・ポパーといった多様な思想家に目を向け、自らの考えを深めつつ、批判的な書評も多数発表しました。1954年にはカトリックに改宗し、以降、ベルギーのルーヴァン大学でジャン・ダバンに師事し、トマス主義の法哲学や哲学について深い知見を得ました。1961年から1964年までの留学を経て、帰国後には20世紀の法哲学におけるトマス主義の意義を明確に示した著書『法の観念-ジャン・ダバンとその周辺-』が刊行されました。

言語能力と多文化的活動

水波は特に外国語に堪能であり、大学時代には中国語を第一外国語として学びました。さらに英語、ドイツ語、フランス語、ラテン語の文献も読解できる能力を持っていました。特にスイスのバーゼルでの世界法哲学会では、故郷の滋賀県に伝わる聖人、中江藤樹の人間存在論をフランス語で報告しました。これには、幼少期からの藤樹に対する深い尊敬と、彼の思想を広める意欲が反映されています。また、定年退官後にはメキシコを訪れ、そこでスペイン語の学習にも取り組みました。

学問的業績

水波の学問的な業績は多岐にわたります。彼は数多くの著作を発表しており、その中には『トマス主義の法哲学 - 法哲学論文選』や『ホッブズにおける法と国家』などが含まれています。彼はまた、法哲学や自然法に関する論文を多数執筆し、日本法哲学会にも名を残しました。

略歴

• - 1922年: 滋賀県彦根市に生まれる。
• - 1946年: 九州帝国大学法文学部法科を卒業。
• - 1949年: 九州大学法学部助教授に就任。
• - 1954年: プロテスタントからカトリックに改宗。
• - 1961年～1964年: ベルギーのルーヴァン大学に留学。
• - 1965年: 九州大学法学部教授に就任。
• - 1985年: 九州大学を定年退官し名誉教授。
• - 1985年: 久留米大学法学部教授に就任。
• - 1998年: オーストリア学術芸術功労大十字賞を受賞。
• - 2003年: 大動脈解離のため死去。

水波の業績は、法学界における哲学的議論に新しい光を当て、多くの学生や研究者に影響を与えています。彼の研究は今後も法哲学の重要な参考として位置づけられるでしょう。

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