水谷竹紫

水谷竹紫の生涯と業績

水谷竹紫（みずたに ちくし）は、1882年10月8日に長崎県で生まれ、1935年9月14日に亡くなった日本の劇作家であり演出家です。彼は、演劇活動の中で女優の水谷八重子（義妹）と深く関わり合い、彼女の才能を発揮する場を提供しました。

学生時代と初期の経歴

竹紫は岡山県立朝日高等学校や長崎県立大村高等学校を卒業後、1901年に東京専門学校の予科に入学、文学部哲学科に進学します。彼の同級生には著名な詩人の相馬御風がいました。1906年には早稲田大学を卒業し、姫路連隊に一年志願兵として入隊しました。その後、神楽坂に住む名妓と結婚し、その妹が後に劇作家として知られる水谷八重子になります。

1908年には、兄が始めた印刷業をきっかけに、安部磯雄を主幹に据えたスポーツ雑誌『運動世界』を創刊しました。この雑誌は竹紫がほとんど単独で制作し、彼の編集者としての才能が開花しましたが、兄の事業がうまくいかず一年後に編集は他の人物に引き継がれました。

演劇への参加

1910年、竹紫はやまと新聞に入社し、学芸部で劇評を担当することになりました。また、小説『熱灰』の連載も行い、文学活動を継続しました。1913年、彼は島村抱月が創立した第1次芸術座に参加し始め、名女優八重子を劇に加えるようになったものの、さまざまな理由から早々に離脱します。後に、芸術座は島村の急死の影響で1919年に解散しました。

第2次芸術座の設立

1918年には講道館と提携し、『柔道』という雑誌を創刊しました。その翌年には東京日日新聞社に転職し、編集局長や社会部長を務めました。1924年には、演劇の発展と八重子の育成を目指して第2次芸術座を再興し、竹紫はその中心人物として活動しました。彼は新派一座との共同公演や松竹との提携も行い、演劇界に多大な影響を与えました。しかし、1928年には悪性腫瘍が見つかり、やむを得ず左腕を切断することになります。この時期、健康管理が不十分だったことが影響し、彼の状況は深刻化してしまいました。

晩年と死去

それでも竹紫は演劇活動を精力的に続け、数多くの作品を発表しました。彼の創作活動は多岐にわたり、演劇だけでなく文筆活動にも従事しました。1935年に胃がんが進行し、彼はその年の9月に亡くなりました。彼の墓所は築地本願寺の和田堀廟所にあります。

彼の遺産

竹紫の影響力は広範囲にわたり、その名は早稲田大学の野球部OBチーム「稲門倶楽部」の名称にも影響を与えています。この名称は1911年に提案され、白瀬矗の南極探検隊への資金調達を目的として、早稲田と慶應のOBによる野球の試合から生まれました。スポーツ愛好者でもあり、竹紫は柔道の二段を取得していました。彼は切断後も劇作家の額田六福と楽しく会話し、二人羽織をして笑いを交わしたなど、ユーモアを忘れない人物でした。

このように水谷竹紫は、演劇界だけでなく文学界全体において重要な存在であり続け、彼の業績は現在も多くの人々に愛されています。

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