水野忠恒 (大名)

水野忠恒

水野忠恒（みずの ただつね）は、江戸時代の大名で、信濃松本藩の第6代藩主です。元禄14年（1701年）に生まれ、元文4年（1739年）に39歳で亡くなりました。沼津藩水野家6代目にあたります。

生涯

4代藩主水野忠周の次男として生まれました。幼名は為千代。兄の忠幹がいたため、当初は家督を継ぐ立場ではありませんでした。そのため、若い頃は酒色に耽り、弓矢や鉄砲を乱射するなど奇行が目立ったとされています。しかし、享保8年（1723年）に兄の忠幹が跡継ぎなく亡くなったため、遺言により松本藩主となりました。

藩主となっても、忠恒は酒に溺れ、狩猟に明け暮れる日々を送り、藩政は家臣に任せきりでした。また、短気な性格であったとも伝えられています。

享保10年（1725年）には、大垣藩主戸田氏長の養女（戸田氏定の娘）を正室に迎えました。その婚儀の報告のため江戸城に登城した際、松の廊下で長府藩世子の毛利師就に突然斬りかかりました。師就は刀を抜かずに応戦し、忠恒の刀を打ち落としました。この騒動は、近くにいた大垣新田藩主の戸田氏房が忠恒を取り押さえ、目付の長田元鄰が師就を制止することで収束しました。

忠恒は、自身の素行が悪く家臣からの人気もなかったため、この一件で領地を没収され、師就に与えられると思い込み、斬りつけたという動機を語りました。しかし、実際にはそのような事実はなく、忠恒は乱心したと判断されました。この事件により、忠恒は改易となり、川越藩の秋元喬房のもとに預けられた後、叔父の水野忠穀の江戸浜町の屋敷に移されて蟄居させられ、そのまま亡くなりました。

その後

水野忠恒の死後、分家の若年寄であった水野忠定の尽力により、同年8月27日、叔父の忠穀に信濃国佐久郡7000石が与えられ、水野家は存続しました。その後、忠穀の嫡男忠友の代に大名として返り咲いています。また、同時に、4代藩主水野忠周の弟である忠照にも佐久郡2000石が与えられました。

人物

水野忠恒は、藩主としての自覚に欠け、酒と狩猟に明け暮れる日々を送ったとされています。また、短気で乱暴な性格であったとも伝えられています。松の廊下での刃傷事件は、彼の乱心ぶりを示すものとして、後世に語り継がれています。

系譜

実父：水野忠周
実母：前田利明の娘
養父：水野忠幹
正室：戸田氏定の娘

参考文献

* 福留真紀『名門水野家の復活 御曹司と婿養子が紡いだ100年』新潮社、2018年

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