水雷砲艦

水雷砲艦についての概要

水雷砲艦（すいらいほうかん）は、主に水雷を装備した艦船で、特に魚雷を主要武器としています。その起源は19世紀後半にさかのぼり、水雷巡洋艦の小型版として製造されていました。水雷巡洋艦の排水量は通常1,000トン程度であるのに対し、水雷砲艦は約500トンとされていますが、これらの艦艇間には厳密な区別が存在しませんでした。

水雷砲艦の発展は、艦砲の技術が進化する一方で装甲技術も向上していた19世紀後半に急速に進行しました。この時期、重砲による大型艦艇への攻撃が困難になり、代わりに水雷兵器が効果的な戦術として台頭しました。1872年にイギリス海軍はホワイトヘッド魚雷を採用し、初めて艦船に本格的に搭載されました。1878年に行われた露土戦争では、ロシアの艦載水雷艇がオスマン帝国の砲艦をホワイトヘッド魚雷で撃沈するという歴史的な出来事も生まれました。この戦闘は、魚雷による攻撃の効果を実証しました。

初期の水雷兵器は既存の艦艇に装備されていましたが、次第に水雷を搭載するための新たな艦艇が建造されるようになりました。近接海域で効果を発揮する小型の水雷艇と、外洋で航行するための大型の水雷巡洋艦がその代表例です。しかし、当時の魚雷は目標に接近する必要があったため、巡洋艦では隠密性や機動力が不足し、肉薄攻撃に適していませんでした。このため、航洋性を重視しながらも艦型を小型化した新しい水雷搭載艦の設計が求められました。

1884年から1885年にかけて、イギリス海軍はカール級砲水雷艦（950トン）を建造し、これが水雷砲艦の始まりとされています。その後、より小型かつ高速な水雷砲艦の設計が進む中、1885年11月には「水雷砲艦」という名称が正式に使われるようになりました。最初の水雷砲艦「ラットルスネーク」は550トン仕様で、多くの後続艦の基礎となりました。

その後、グラスホッパー級やシャープシューター級などの水雷砲艦が次々に建造されるとともに、それらは主力艦を水雷艇の襲撃から守る新たな任務を担うことになりました。しかし、これらの艦艇は外洋での航行能力に問題があり、小型の艦艇に高出力の機関を搭載することによる振動の問題も頻発しました。このような背景から、敵水雷艇から主力艦を守るために、より大型で強力な水雷艇駆逐艦が設計され、1892年度計画で「ハヴォック」と「デアリング」が建造されました。これらは後に駆逐艦として一般に呼ばれるようになり、外洋での水雷襲撃任務を果たすようになります。

水雷砲艦は16世紀から19世紀の海軍において重要な役割を果たしましたが、最終的には水雷艇駆逐艦にその任務を引き継がれることとなります。この技術革新は、海軍戦略や戦術に大きな影響を与え、近代艦艇の設計や運用にも大きな変化をもたらしました。

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