永富映次郎

永富映次郎：映画と文筆に生きた生涯

永富映次郎（ながとみ えいじろう、本名: 熊雄）は、1903年（明治36年）11月6日に長崎県長崎市で生まれ、1981年（昭和56年）10月17日に急性肺炎のため東京都北区で亡くなりました。映画監督、脚本家、編集技師、そして文筆家として、多岐にわたる分野で才能を発揮しました。

生い立ちと映画界への道

長崎市で生まれ育った永富は、1918年（大正7年）に長崎市勝山高等小学校を卒業後、地元の映画研究会で活動を始めました。この活動がきっかけとなり、映画監督の牛原虚彦との出会いを果たします。1925年（大正14年）には牛原の書生として上京し、同年9月には松竹蒲田撮影所に入社、助監督として映画界でのキャリアをスタートさせました。

松竹蒲田撮影所では、牛原虚彦の助監督を務める傍ら、脚本家としても才能を発揮し、1926年（大正15年）には清水宏監督の『真紅の熱情』で脚本家デビューを果たしました。その後も助監督として経験を積み、牛原の独立とともに日活太秦撮影所へ移籍。1934年（昭和9年）にはゼーオースタヂオに移り、念願の監督デビュー作『俺は水兵』を発表しました。

戦中・戦後の活動と文筆家としての転身

1937年（昭和12年）に大都映画へ移籍し、サイレント映画の監督として活動。その後、朝日映画製作に移り、ドキュメンタリー映画の製作に携わりました。戦後はフリーランスの映画監督、脚本家として活動し、1963年（昭和38年）に映画界から引退しました。

映画界引退後、永富は文筆家として新たな道を歩み始めます。1972年（昭和47年）には、駆逐艦「雪風」の生涯を描いた『駆逐艦雪風 誇り高き不沈艦の生涯』を出版。その後も、桜井忠温や日本二十六聖人をテーマにした著作を発表し、歴史や人物に関する深い洞察力と情感豊かな文章で読者を魅了しました。

フィルモグラフィーとビブリオグラフィー

永富映次郎は、映画監督としてだけでなく、脚本家、編集技師としても数多くの作品に携わりました。主な作品には、以下のようなものがあります。

松竹蒲田撮影所: 『真紅の熱情』(脚本)、『進軍』(監督補助)、『若者よなぜ泣くか』(助監督)、『金色夜叉』(監督補助)、『七つの海 後篇 貞操篇』(監督補助)、『花嫁の寝言』(監督補助)、『恋の花咲く 伊豆の踊子』(助監督)
ゼーオースタヂオ/太秦発声映画: 『俺は水兵』(監督)、『なみだの母』(監督)、『勝太郎小守唄』(脚本・監督)、『南紀州』(編集)
大都映画: 『母の鐘』(原作・脚本・監督)、『海の弥次喜多』(監督)、『俺等の仲間』(監督)、『吾が子』(監督)、『暁の陸戦隊』(脚本・監督)
朝日映画製作: 『戰ふ女性』(脚本・監督)、『鉄輪』(監督・構成)、『日本勤労歌 第一輯』(構成)、『燈火』(監督・演出)、『ニッポンバンザイ』(構成)

また、文筆家としては、以下のような著作があります。

『映画用語辞林』(1941年)
『新篇映画用語辞林』(1941年)
『駆逐艦雪風 誇り高き不沈艦の生涯』(1972年)
『「肉弾」将軍 桜井忠温』(1976年)
* 『鮮血の十字架 日本二十六聖人殉教記』(1977年)

晩年と死

晩年は東京都北区王子に居を構え、執筆活動を続けました。1981年（昭和56年）10月17日、急性肺炎のため北区王子の病院で死去。77歳でした。

永富映次郎は、映画界と文筆界の両方で才能を発揮し、多くの人々に感動と影響を与えました。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、語り継がれています。

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