永竹由幸

永竹由幸

永竹由幸（ながたけ よしゆき、1938年7月26日 - 2012年5月9日）は、日本のオペラ研究家、評論家であり、昭和音楽大学の教授を務めました。彼の活動は、オペラの普及と研究に大きく貢献しました。

経歴

東京都中央区築地で生まれた永竹由幸は、幼少の頃から舞台芸術に親しんでいました。慶應義塾中等部に在籍していた頃には歌舞伎に魅了され、足繁く劇場に通いました。また、藤原歌劇団の練習所にも出入りし、オペラへの関心を深めました。

慶應義塾高等学校在学中には、演劇部で市川猿之助作の「宝島」の作曲を担当し、猿之助と共に白木劇場の舞台に立つという貴重な経験をしました。慶應義塾大学に進学後は、オペラ研究会を創立し、初代代表として大学におけるオペラ研究の基礎を築きました。慶應義塾創立100周年記念公演では、若杉弘指揮によるメノッティのオペラ「電話」を演出し、その才能を発揮しました。

1961年に慶應義塾大学商学部を卒業後、三井物産に入社。1965年からは同社のイタリア修業生としてボローニャ大学に留学し、イタリアの文化や芸術に触れました。その後、三井物産ミラノ店に計11年間勤務し、オペラの本場で研鑽を積みました。1988年に三井物産を退社後、ANFコーポレーション、サウンド・バンクといった企業の社長を歴任し、ビジネスの世界でも活躍しました。しかし、1996年にこれらの役職を退任し、再びオペラ研究の世界へと戻りました。

1995年より東京藝術大学の講師を務め、後進の指導にあたりました。1998年には昭和音楽大学の教授に就任し、オペラ研究の第一人者として教鞭を執りました。その間、数多くのオペラ関連の著書を出版し、オペラの魅力を広く一般に伝えました。

2012年5月9日、前立腺がんのため逝去。73歳でした。

著書（一部）

『オペラ名曲百科』（音楽之友社、1980-1984年）
『オペラと歌舞伎』（丸善ライブラリー、1993年、のちに水曜社）
『オペレッタ名曲百科』（音楽之友社、1999年）
『椿姫とは誰か オペラでたどる高級娼婦の文化史』（丸善ブックス、2001年）
『オペラになった高級娼婦　椿姫とは誰か』（水曜社）
『痛快!オペラ学』（集英社インターナショナル、2001年、改題「オペラの数ほど愛がある」）
『ヴェルディのオペラ 全作品の魅力を探る』（音楽之友社、2002年）
『ヴェルディへの旅 写真とエッセイでたどる巨匠の生涯』（木之下晃写真、実業之日本社、2006年）
『ロココの裏の欲望 モーツァルトのオペラワールド』（ショパン、2006年）
『ロココのスカートをまくった男モーツァルト』（扶桑社、2007年）
『ヴォルフ＝フェラーリの生涯と作品 20世紀のモーツァルト』（水曜社、2007年）
『マリーア・カラス 世の虚しさを知る神よ』（東京書籍、2007年）

翻訳

ディーンレー・ハッセー『ヴェルディ』（音楽之友社、1974年）
オペラ対訳シリーズ（音楽之友社、1987年- 共訳、2冊）
* 名作オペラ ブックス（音楽之友社、1988-89年 - 対訳、3冊）

永竹由幸は、オペラ研究における多大な貢献により、日本の音楽文化に大きな足跡を残しました。彼の著書は、今日でも多くのオペラファンや研究者にとって貴重な資料となっています。

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