永観 (僧)

永観（ようかん/えいかん）

永観は、平安時代後期に活躍した三論宗の僧侶です。長元6年（1033年）に生まれ、天永2年11月2日（1111年12月4日）に生涯を閉じました。実父は文章生の源国経で、石清水八幡宮別当の元命の養子となりました。彼は禅林寺（現在の永観堂）の7世住持であり、中興の祖としてその名を知られています。禅林寺が「永観堂」と呼ばれるのは、この永観にちなんだものです。

修学と浄土教への帰依

11歳で禅林寺の深観に師事し、受戒した後、東大寺東南院に移り住みました。そこで有慶や顕真に師事し、三論教学を深く学びました。さらに、法相教学や華厳教学にも通じ、幅広い仏教の知識を身につけました。この頃から浄土教に深く帰依し、毎日一万遍の念仏を唱えることを日課としていました。1062年（康平5年）には山城国光明寺に隠棲しましたが、10年後の1072年（延久4年）に禅林寺に戻り、浄土教を民衆に広める活動を開始しました。寺内には「薬王院」を設け、病人の救済にも力を尽くしました。

阿弥陀如来との伝説

1082年（永保2年）、50歳になった永観が日課の念仏を唱えながら、本尊である阿弥陀如来の周りを歩いていたときのことです。突然、阿弥陀如来が須弥壇から降りてきて、永観と一緒に歩き始めたという伝説が残っています。驚いた永観が立ち止まると、阿弥陀如来は振り返り「永観、遅し」と告げたと言われています。この伝説に基づいて、禅林寺の本尊である阿弥陀如来立像は、顔を左に向けている独特の姿をしています。

東大寺別当としての活躍

1099年（康和元年）、永観は権律師に任じられましたが、翌日には辞任しました。しかし、1100年（康和2年）には東大寺別当に任命され、一度は辞退したものの再度任命を受けました。東大寺別当として、正倉院や七重塔、食堂、回廊などの修理を行い、東大寺の復興に尽力しました。その手腕から「能治の永観」と称えられました。2年後、禅林寺に退き、1104年（長治元年）にようやく別当を辞任することが認められました。

幅広い社会活動と著作

永観は、往生講や迎講といった仏教行事を開催したり、悲田院で病人の救済に当たったり、囚獄の囚人たちの救済を行うなど、幅広い社会活動を展開しました。また、『往生講式』や『往生拾因』などの著作も残し、浄土教の教えを広く民衆に伝えようと努めました。後世には、専修念仏の先駆者とみなされ、浄土宗においては「浄土宗八祖」の一人に数えられています。

永観は、仏教の教えを実践し、社会に貢献した僧侶として、今日でも多くの人々に尊敬されています。

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