永遠の終り

永遠の終り (The End of Eternity)

アイザック・アシモフによって1955年に発表されたSF小説『永遠の終り』は、時間旅行というテーマを扱いながら、人類の未来と自由意志について深く考察する作品です。アシモフ作品としては珍しくタイムトラベルを題材にしており、彼の代表作であるファウンデーションシリーズとの関連性も指摘されています。

あらすじ

物語の舞台は、通常の時間軸から隔離された「時場」の中に存在する時間管理機関「エターニティ」。エターニティの構成員である「永遠人（エターナル）」たちは、人類の歴史を監視し、必要に応じて「現実矯正」を行います。主人公のアンドリュウ・ハーランは、熟練した技術士として、時間操作技術を用いて歴史の重要な分岐点に介入する役割を担っています。

ある日、ハーランは上司から研修生クーパーの教育係を任されます。クーパーは年齢的にエターニティに加わるには不適格であり、ハーランは彼に対して疑念を抱きます。現実矯正のために482世紀に派遣されたハーランは、そこで美しい女性ノイエスと出会い、恋に落ちます。しかし、現実矯正を実行すれば、ノイエスの存在が消滅してしまうことを知ったハーランは苦悩します。

やがて、エターニティの存続に関わる重大な秘密を知ったハーランは、ノイエスを救うために組織に反旗を翻します。彼は、時間操作の技術を駆使して、エターニティの根幹を揺るがす行動に出るのでしょうか。

主な登場人物

アンドリュウ・ハーラン: 本作の主人公。技術士として、時間操作技術を用いて歴史の修正を行う。
カンター・ヴォイ: 社会学士。
ヤーロウ: 教育士で、ハーランの教師。
レイバン・トウィッセル: 上級算定士で、エターニティの重鎮。ハーランの上司。
ブリンズリイ・シェリダン・クーパー: 研修生。ハーランから「古代史」の授業を受ける。過去に重要な役割を果たすために送り込まれる。
ノイエス・ランベント: 482世紀でハーランが出会う女性。
ホッブ・フィンジ: 算定士。482世紀におけるハーランの上司。
ヴィッカー・マランゾーン: 24世紀に時場理論を完成させた物理学者。彼の業績がエターニティ設立につながる。

ファウンデーションシリーズとの関連性

『永遠の終り』の世界とファウンデーションの世界は、歴史上の特定の時点から分岐したパラレルワールドとして描かれています。その分岐点は、イタリアの物理学者がノイエスからの書簡に触発され、核分裂反応の実験を行ったことであるとされています。ファウンデーションの世界では、核兵器開発に伴う科学技術の発展が超光速航法の開発に繋がり、人類が銀河に進出します。その結果、ファウンデーションシリーズの特徴である「地球人類のみの銀河社会」が実現することになります。

一方、『永遠の終り』の世界では、時間操作技術が発展したものの、革新的な出来事は現実矯正の対象となるため、保守的な社会が維持されます。この世界の未来は、アシモフのSF短編『袋小路』で暗示されており、ファウンデーションシリーズに異星人が登場しない理由を示唆しています。

備考

作中でエターニティの標語として登場する「最大多数の最大幸福」は、功利主義の思想を表しています。また、過去に送られたクーパーからのメッセージとして、原爆以前には存在しないはずのキノコ雲の図案が登場しますが、キノコ雲は核爆発以外でも発生する可能性があります。

『永遠の終り』は、時間旅行というSF的な設定を通して、自由意志や歴史の選択、そして人類の未来について深く考えさせる作品です。アシモフの描く壮大な世界観と、複雑に絡み合う人間ドラマは、読者を魅了し続けています。

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