求婚旅行

求婚旅行（きゅうこんりょこう）

概要

『求婚旅行』は、1974年4月6日から同年9月21日まで、毎週土曜日の夜9時から1時間枠で、日本テレビ系列の「グランド劇場」枠にて放送されたテレビドラマです。作家・田辺聖子の同名小説を原作とし、結婚適齢期を迎えながらも独身を貫く美しいOLを主人公に据え、彼女と家族、そして彼女を取り巻く人々の間で繰り広げられる様々な出来事を描いたホームドラマとして制作されました。登場人物たちが経験する男女間の喜びや悲しみ、人生の機微を丁寧に描き出しており、主人公のOL役は新珠三千代が演じました。

演出上の特徴

番組の冒頭では、オープニングテーマが始まる直前に、あたかもタイプライターで文字が打ち出されるような視覚効果とともに番組タイトルが表示されるという、当時のテレビドラマとしてはユニークな演出手法が採用されていました。

主な出演者

本作には、主演の新珠三千代をはじめ、実力派俳優が多く出演しています。

吉見昭子：新珠三千代
吉見とめ：杉村春子
吉見和子：太地喜和子
芝岡平三：北村和夫
芝岡みどり：高橋洋子
芝岡三枝子：園佳也子
芝岡笑子：北村佳子
芝岡咲子：瀬島充貴
芝岡貞代：安芸秀子
六車：財津一郎
吉見新一：永井秀和
香村：江守徹
千秋：山口いづみ
桜田淳子
河上：加藤武
奈良岡朋子
酒巻：長谷川哲夫
春吉：下元勉
藤江：赤木春恵
紀子：中村メイコ
田端：小沢幹雄
森塚敏
十輪院和尚：小松方正（第3話ゲスト）
麻美：福田公子（第12話ゲスト）
田代：金田龍之介（第15話ゲスト）

主なスタッフ

原作：田辺聖子
脚本：北村篤子
演出：池田義一、小杉義夫
プロデューサー：早川恒夫
制作：東宝、日本テレビ

制作の背景

『求婚旅行』の制作は、当時の演劇界の重鎮を擁する文学座の俳優陣が多く参加した点で注目されました。主演の新珠三千代に加え、杉村春子、太地喜和子、北村和夫、江守徹、加藤武など、文学座に所属する実力派俳優たちが多数キャスティングされ、劇団として出演するような体制が取られました。

この背景には、若手女優であった高橋洋子の起用が大きく関わっています。高橋は、本作放送の前年にNHKで放送された連続テレビ小説『北の家族』でヒロインを務め、その演技が大きな反響を呼び、各方面から次作への出演オファーが殺到していました。高橋が『求婚旅行』への出演を決めたのは、早くから交渉が進んでいたことに加え、文学座側の方針と日本テレビ側の意向が合致したためとされています。文学座としては、『北の家族』で演じた役柄のイメージを大切にしつつ、明朗な現代娘という役で高橋を育てていきたい考えがあり、これが本作の役柄と合致したのです。

また、本作は、文学座のベテラン俳優たちが若手である高橋洋子を指導しながら共に作品を作り上げていくという側面も持ち合わせていました。1974年2月21日に行われた最初の収録では、高橋は新珠三千代、杉村春子、北村和夫といった大先輩に囲まれながら芝居に臨んでいます。特に杉村春子は、高橋に対して非常に厳しい指導を行ったと伝えられています。杉村は高橋を「まだ何もできない子供」「演技の善し悪しを語れる段階ではない」と評し、「何もできないという自覚を持ち、地道な努力を続けること」「おごらずに精進することが何よりも大切。私と一緒にいる時は、あなたにとって耳の痛いこともはっきり言うでしょう」と語ったと記録されています。このような厳しくも愛情のある指導は、文学座が伝統的に持つ若手育成の姿勢を示すエピソードと言えるでしょう。

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