汎甲殻類

汎甲殻類（Pancrustacea）について

汎甲殻類、または八分錘類（Tetraconata）は、甲殻類と六脚類が同じ起源を持つことを示す分類群として提唱されています。これは、節足動物の中でカニやエビ、さらには昆虫やトビムシが一つの系統に属するという説に基づいています。この分類は、甲殻類が多足類（ムカデやヤスデ等）よりも六脚類に近いという見解とも対立していますが、2010年代以降、汎甲殻類仮説は主流となり、分子系統解析によって支持されています。

名称

汎甲殻類という名称は、特に多くの種が持つ複眼の四角い個眼や八分割される硝子体に由来しており、これに基づき八分錘類（Tetraconata）とも呼ばれることがあります。汎という接頭辞は、クラウングループおよびそのステムグループを含む広範な分類を示すために使用されるため、混乱を避けるために八分錘類と呼ぶことが好まれることもあります。

構成

汎甲殻類の単系統性を支持する証拠は、複数の分子系統解析によって得られています。これには、細胞核やミトコンドリアのリボソームRNA遺伝子、さらにはタンパク質をコードする遺伝子の比較が含まれます。これらの研究の多くは、甲殻類が六脚類に対して側系統群であること、つまり六脚類は甲殻類から進化したことを示唆しています。また、かつて多くの甲殻類を分類していた顎脚類（Maxillopoda）が多系統群であることも明らかになっています。

さらに、汎甲殻類の仮説を支持する証拠は分子系統解析だけでなく、内部形態の構造にも見られ、特に神経系や個眼の構造、神経芽細胞の存在、さらにはパイオニアニューロンによる軸索形成がその例として挙げられます。これらの解析から得られた知見に基づき、汎甲殻類の内部構成については様々な系統仮説が提案されています。

系統仮説

汎甲殻類にはいくつかの主要な系統仮説があります。例えば、以下のような分類が提案されています。

• - 貧甲殻類 Oligostraca: 貝虫類、ヒゲエビ類、鰓尾類、シタムシ類から成る。
• - ウオヤドリエビ類 Ichthyostraca: 鰓尾類とシタムシ類。
• - Altocrustacea: 貧甲殻類を除く汎甲殻類。
• - 真甲殻類 Vericrustacea: 鰓脚類、軟甲類、カイアシ類、鞘甲類。
• - 異エビ類 Allotriocarida: カシラエビ類、鰓脚類、ムカデエビ類、六脚類。
• - 多甲殻類 Multicrustacea: 軟甲類、カイアシ類、鞘甲類。
• - 共甲類 Communostraca: 軟甲類、鞘甲類。
• - 六幼生類 Hexanauplia: カイアシ類と鞘甲類の関係を示す、６つのノープリウス幼生期を持つ群。
• - 奇エビ類 Xenocarida: カシラエビ類とムカデエビ類。

汎甲殻類の研究は進んでおり、2019年の時点で貧甲殻類やウオヤドリエビ類、Altocrustacea、多甲殻類などの存在が広く認められ、今後さらなる進展が期待されています。特に、ムカデエビは六脚類に最も近い甲殻類であると考えられており、その生態や進化の解明が進めば、汎甲殻類の理解がより深まることでしょう。

参考文献

関連研究や文献も多く存在し、汎甲殻類の系統的な位置を探るための重要な情報が提供されています。これにより、今後ますます詳細な分類や系統の理解が進んでいくことが期待されます。特に、甲殻類と六脚類に共通する進化の過程は多くの研究者の関心を引きつけています。

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