江ノ島鎌倉観光600形電車

江ノ島鎌倉観光600形電車の概要

江ノ島鎌倉観光600形電車（えのしまかまくらかんこう600がたでんしゃ）は、江ノ島電鉄（以下「江ノ電」と称する）において1970年に導入された制御電動車両です。この車両は、東京急行電鉄（東急）から譲渡されたデハ80形を元に、2両固定編成へと改造され、1990年までの間運用されていました。

導入の背景

江ノ電の運営していた路線は、1945年までは軌道法に基づく軌道線として運行されていました。しかし、同年より地方鉄道法に基づく鉄道線に変更され、続く数十年の管理運営の改善が図られました。1953年から1960年にかけては、輸送体制の近代化を目的に多数の新車両が導入されました。

しかし、1960年代に入るとモータリゼーションの進展により、江ノ電の利用者数は減少に転じ、鉄道事業収入も低迷し始めました。さらに、路線廃止が議論されるようになりましたが、鉄道事業は江ノ電の重要な収入源であったため、撤退は一旦見送られました。

その後の1970年代初頭、江ノ電は再度の近代化に取り組みました。新たに輸送力の強化と運行の合理化を目指し、東京急行電鉄から4両の中古電車を譲り受け、新たなる600形が誕生しました。

仕様と構造

600形は、東急からの譲渡にあたり、江ノ電に適した改造を受けました。台車の改変による軌間の短縮、片運転台化、客用扉の移設など、多岐にわたる改良が施されています。車両は全長13,920 mmの半鋼製で、外観の特徴としては丸みを帯びた前面形状が挙げられます。

客室にはロングシートが設けられ、定員は100名で、32席が用意されました。また、運転室と客室の間には仕切りが設けられ、運転室には運転台および監視用窓が設けられています。

主電動機は改造により新たに搭載され、空気圧縮機や集電装置も更新されました。導入当初は運用中にトラブルがあったものの、1973年には主電動機が増設され出力が向上しました。

運用の変遷

600形電車は、1970年9月から運用を開始しました。運行開始後はしばらく順調な運用が続きましたが、1972年に行われた定期検査で車両の塗装が変更されるなど、時折改造が実施されました。1970年代から1980年代初めにかけては、地域の交通機関として重要な役割を果たしました。

しかし、1981年には新たに導入された1000形の登場により、603-604編成が運用から外れました。続いて601-602編成も1985年に運用を離脱し、最終的に1990年に全ての600形が廃車されることとなりました。

退役後の動向

601号車は東京都世田谷区にて静態保存されており、外装は江ノ電時代の姿を保ったままとなっています。また、652号車については和菓子店の「扇屋」にて部分的に保存され、外観は江ノ電を模した形となっています。600形は江ノ電の歴史の中で重要な役割を果たした電車として、多くの人々の記憶に残っています。

長らくの間、江ノ電の現役時代を象徴する車両として多くのファンに愛されてきた600形電車。退役後も、その姿が今も地域の人々に親しまれ、今後もそのユニークな歴史は語られ続けることでしょう。

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