江上信雄

江上信雄の生涯と業績

江上信雄（えがみ のぶお、1925年1月5日 - 1989年10月17日）は、日本の生物学者であり、特にメダカを用いた研究で知られています。石川県金沢市に生まれ、1947年に東京帝国大学理学部動物学教室を卒業後、同大学で助手や講師としてのキャリアをスタートしました。1961年には国立放射線医学総合研究所に転職し、そこでは生物研究部の室長から部長に昇進しました。1970年には東京大学の理学部動物学教室の教授に就任し、その後も様々な学術的役割を果たしました。

メダカを用いた研究

江上は、生殖生物学や放射線生物学の分野において、メダカを研究材料として選びました。彼の業績は、メダカの老化や発ガンに関する研究に大きく寄与しており、メダカ生物学の発展に中心的な役割を果たしました。多くの学生や研究者が彼の指導の下で成長し、彼に学んだ有名な研究者には嶋昭紘、田口泰子、青木一子、酒泉満、三谷啓志、島田敦子などがいます。

江上の学問はただ理論的なものに留まらず、彼はその文才を活かして多くの著作を執筆しました。彼の論文「雄性物質処理をした雌メダカの雄性物質発現に関する実験的研究」は1956年に東京大学で理学博士号を取得する際の研究成果であり、彼の業績を象徴しています。

晩年と受賞歴

1985年に東京大学を定年退職した後は、山口大学の教授職を経て、国立環境研究所の所長に就任しました。彼の多様な知識とリーダーシップは、これらの役職でも生かされました。しかし、1989年には大腸癌が原因で亡くなるまで、彼は自身の研究を続けていました。療養中にもかかわらず、最後の著作である「メダカに学ぶ生物学」を完成させ、そこには自身の研究の経過とメダカの歴史もまとめられています。

彼の業績は、高く評価されており、1963年には日本動物学会賞を受賞、1988年には紫綬褒章を受け、1989年には叙従三位、叙勲二等授旭日重光章を授与されました。学問に携わったその生涯は、後世に多くの影響を与え続けています。

辞世の句と人柄

江上の優しく洒脱な性格は、彼の辞世の句にも表れています。その句は「早生まれ 早寝早起き 早がてん 浄土へまいるも ちょっと早めに。合掌。」というもので、その死後、彼の妻によって発表されました。この言葉からは、彼の生前の人柄と、穏やかな人生観がうかがえます。

江上信雄の研究と人柄は、今でも多くの生物学者たちに影響を与え続け、メダカの生物学における彼の功績は永遠に語り継がれることでしょう。

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