江上波夫

江上 波夫（えがみ なみお）の生涯と業績

江上波夫（1906年11月6日 - 2002年11月11日）は、日本を代表する考古学者であり、東京大学の名誉教授として文化に多大な貢献を果たしました。彼は山口県下関市で生まれ、考古学に対する情熱を持つようになった背景には、学生時代の経験があります。考古学の道に進むきっかけとして、古墳から出土した品に触れたことが特に大きい影響を与えたと言われています。

学問のスタートとキャリアの軌跡

江上は東京府立五中から旧制浦和高等学校を経て、1930年に東京帝国大学文学部東洋史学科を卒業しました。彼は1930年代初頭に東亜考古学会に所属し、中国の北京へ渡り、現地調査を行いました。その結果、彼は内モンゴルにあるオロンスム遺跡にて重要な発見をし、特にネストリウス派とカトリックの教会の跡や仏教関係の文書を確認しました。

1948年には東京大学東洋文化研究所の教授に就任し、その後所長を経て名誉教授となりました。彼は生涯を通じて多くの業績を残し、1973年には多摩[[美術大学]]で講師を勤めるほか、古代オリエント博物館の館長や文化功労者としても知られています。

騎馬民族征服王朝説の提唱

江上波夫の名を広く知らしめたのは、彼が提唱した「騎馬民族征服王朝説」です。この説は、古代日本の国家形成が東北アジアの騎馬民族によってなされたとする大胆なもので、1948年には東京・お茶の水の喫茶店での座談会を通じて公表されました。この講演は「日本民族＝文化の源流と日本国家の形成」と題され、多くの学者や民俗学者から注目されました。

江上は、この説を発表した後、反論や批判に直面しましたが、彼は学説の不備を指摘されるたびに修正を加え、議論を推進しました。騎馬民族説は、戦後の時代背景の中で、神話に依存しない歴史的理解を提唱した重要な理論といえます。

影響と評価

江上の研究は、多くの作家や学者にも影響を与えました。漫画家手塚治虫や小説家松本清張、司馬遼太郎らは、彼の思想に触れ、彼の業績を評価しています。また、日本の考古学界においても、彼の影響力は大きく、後進にまでその思想が受け継がれています。

学会においては、江上の騎馬民族説を巡る激しい論争が続き、彼自身はこの問題に対し果敢に議論を展開しましたが、定論には至りませんでした。それでも、彼が示した視点は、今日の日本の古代史の研究においても重要な位置を占めています。

晩年とその後

江上は、晩年まで現場に足を運び、考古学的調査を行い続けました。2002年に96歳で逝去するまで、彼の情熱は衰えることなく、特にモンゴルでのチンギス・ハーン陵墓の探査に情熱を注いでいました。彼は「考古学はフィールドワークが基本」という信念を持ち続け、各地の遺跡を巡り、その経験を重ねていきました。

また、彼の著作には、研究成果を記したものから詩集まで幅広く、知識人としての多面性も示されています。その情熱と探求心は、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

江上波夫の業績は、日本の考古学だけでなく、歴史学全体に新たな視点を提供し、後世に語り継がれるべき重要な学者であると言えるでしょう。

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