征服王朝

征服王朝

征服王朝とは、中国史における用語で、漢民族以外の民族によって支配された王朝の総称です。具体的には、遼・金・元・清の4王朝を指します。五胡十六国や北朝は「浸透王朝」として区別されます。

語源

「征服王朝」という言葉は、在米ドイツ人東洋学者のウィットフォーゲルと中国科学院考古研究所の馮家昇による共著『中国社会史・遼』（1949年）に由来します。彼らは、モンゴル系やツングース系の民族が漢民族を征服し、「中華帝国」の系統に属する王朝を建てたものの、少数の異質な文化を保持したまま中国を支配したため、漢民族王朝とは異なる性格を持つと考え、「征服王朝」と名付けました。

陳梧桐（中央[[民族大学]]）は、遼・金・元・清を建国した民族を「外国人」と呼ぶのは不適切であると指摘しています。中国は古来より多[[民族国家]]であり、これらの民族も中国の歴史を共に築いてきた「中国人」であると主張しています。民族平等の観点から、少数[[民族]]を外国人とみなすのは陳腐な視点であると批判しています。

体制

征服王朝の統治体制は、遼の北面制・南面制に代表されるように、複合的なものでした。金・元・清も同様に多元的な政治体制を採用しました。これは、統治民族が本来の文化を保持しながら、中国の統治に成功したと評価される一方で、中国文化への同化によって弱体化し、滅亡に至ったという見方もあります。また、異質な征服民族と中華[[民族]]の文化的な接触によって、第三の新しい文化が生まれたとする見方もあります。

社会的な側面から見ると、北アジアの遊牧・狩猟社会と、被征服社会である中国の農耕社会との複合体制と言えます。文化的には、契丹文字、女真文字、パスパ文字、満洲文字といった独自の文字を創生し、民族的な意識を高揚させたことが特徴です。

歴史的影響

少数[[民族]]による中原の周期的な征服は、中国の歴史における分裂後の統一が遊牧民、あるいは遊牧民化した漢人政権によって成されたという点だけでなく、制度革新をもたらした点においても重要です。

周: 草原に近い北方に起源を持ち、体系的な封建制度や天人観を確立し、中国文化の基礎を築きました。
秦: 春秋戦国時代の分裂を統一し、草原文明の特質を吸収して統一的な郡県制や皇帝制を確立し、その後の2000年にわたる中国の歴史の基礎を決定づけました。
隋・唐: 魏晋南北朝の分裂を統一し、鮮卑の二元構造を継承した統一帝国を築き上げました。唐初期の府兵制は鮮卑の部落兵制に起源を持ち、軍人の地位が高く、特権が与えられていました。また、国家が国民に田や荒地を給付する均田制は、鮮卑の共同体制度に由来すると考えられています。

このように、中国の歴史においては、少数[[民族]]の漢化だけでなく、中原文化や制度が草原の伝統から影響を受けている側面も重要です。

その他の例

中国以外にも、インドのデリー・スルターン朝やムガル帝国、メソポタミアのグティ王朝、古代エジプトのリビュア王朝やクシュ朝、アルバニア人によるムハンマド・アリー朝など、異民族が征服した王朝の例は多数存在します。

参考文献

田村実造著『中国征服王朝の研究』(東洋史研究会,1964年-1985年)
* 竺沙雅章著『征服王朝の時代 : 宋・元』(講談社,1977年)

もう一度検索