江口襄

江口襄

江口襄（えぐち のぼる）は、1854年（嘉永7年）に栃木県烏山町に生まれ、1924年（大正13年）に没した医師、陸軍軍医です。作家の江口渙の父としても知られています。

来歴

1881年（明治14年）に東京医学校を卒業。同期には森鷗外、小池正直らがいました。卒業後、軍医となり、日本で初めて肺外科手術を成功させました。小倉師団では、森鷗外の前任の軍医部長を務めています。また、森鷗外の小説『雁』の登場人物のモデルの一人とも言われています。

1885年（明治18年）には、東京府が制定した「郡区医職務章程」において、郡医志願者の試験委員を務め、死体検案試験を担当しました。1892年（明治25年）には、相馬事件の解剖主任を務めています。この事件は、陸奥中村藩主の相馬誠胤の死因に疑義が生じたため、遺体を掘り起こし解剖するという異例の措置が取られました。

その後、1897年（明治30年）には大阪城南病院の院長に就任。1904年（明治37年）には、日本赤十字社三重支部山田病院（現在の山田赤十字病院）の初代院長に就任しました。1912年（明治45年）に退職し、故郷の烏山町で余生を送りました。

人物

東京大学医学部では、森鷗外や詩人野川隆の父である野川二郎と同期でした。また、北里柴三郎とも親交がありました。森鷗外は『独逸日記』の中で、江口について「軽率で浮薄であり、ヨーロッパの文芸をかじってはいるが、本質を理解せず、口先だけで官僚に媚びへつらい、患者を金儲けの手段にしている」と酷評しています。また、「学問に対する真摯な姿勢がなく、発言も下品である」とも述べています。さらに、海江田は江口の媚びへつらう態度を嫌い、早川も江口の言動を怪しいと思っていたと記されています。

栄典

1896年（明治29年）3月24日 - 正六位
1897年（明治30年）11月30日 - 従五位

江口襄は、医師としてだけでなく、軍医としても重要な役割を果たしました。また、森鷗外との関係は、鷗外の作品にも影響を与えたと考えられます。その生涯は、明治時代の医学界と社会の一側面を映し出すものとして、興味深いと言えるでしょう。

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