江崎屋辰蔵

江崎屋辰蔵（生没年不詳）は、江戸時代後期に江戸で活躍した地本問屋です。号は江辰、または専玉堂と称しました。幕末期の江戸において、馬喰町三丁目に店を構え、地本問屋としての営業を行っていました。

出版作品

江崎屋辰蔵は、当時の人気絵師であった二代目歌川豊国、歌川国貞、歌川広重らの錦絵を数多く出版しました。以下に主な作品を挙げます。

二代目歌川豊国『東都名所』
大判の錦絵揃物で、1830年頃に刊行されました。「両国 中村芝翫」のような役者絵が含まれています。
歌川国貞「伊達競阿国劇場」
天保9年（1838年）正月、市村座で上演された『伊達競全盛曽我』に取材した大判2枚続の錦絵です。
歌川広重『東海道五十三次之内（行書東海道）』
横間判55枚揃の錦絵で、天保12年から天保13年頃に刊行されました。江崎屋吉兵衛との合版です。
歌川広重『東都名所』
横中判の錦絵揃物で、天保12年頃に刊行されました。

これらの作品から、江崎屋辰蔵が当時の浮世絵界において重要な役割を果たしていたことが伺えます。特に歌川広重の『東海道五十三次』は、その後の浮世絵版画の発展に大きな影響を与えた作品であり、江崎屋辰蔵の出版活動は、浮世絵文化の隆盛に貢献したと言えるでしょう。

参考資料

日本浮世絵協会編『原色浮世絵大百科事典』第3巻、大修館書店、1982年 ※136頁
吉田漱『浮世絵の基礎知識』雄山閣、1987年 ※145頁

これらの参考文献からも、江崎屋辰蔵の活動や出版した作品についての詳細を知ることができます。

江崎屋辰蔵は、単なる地本問屋としてだけでなく、当時の文化を支える重要な役割を果たした人物として、その名を歴史に刻んでいます。

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