江崎屋吉兵衛

江崎屋吉兵衛（えざきや きちべえ）は、生没年不詳の江戸時代の地本問屋です。天寿堂、江吉という号を用いていました。活動時期は安永年間から安政年間にかけてで、江戸の馬喰町4丁目長三郎店や田所町で営業していた記録が残っています。

江崎屋吉兵衛は、多くの浮世絵師たちの作品を出版しました。特に知られているのは、鳥居清長の紅摺絵、玉川舟調の錦絵、喜多川歌麿の美人画、歌川広重や歌川国芳の風景画、歌川国貞の役者絵、菊川英山の美人画、渓斎英泉の風景画などです。

嘉永5年（1852年）6月には、版元の株を有田屋清右衛門に譲っており、この頃に店を閉じたと考えられます。短い期間での活動ではありましたが、その間に数多くの著名な浮世絵師たちの作品を世に送り出し、江戸の文化に大きく貢献しました。

以下に江崎屋吉兵衛が手がけた主な作品を挙げます。

鳥居清長
『芝居こま絵』：横細判の紅摺絵で、安永年間に制作されました。
玉川舟調
『風流化粧鏡』：大判の錦絵揃物で、寛政年間に制作されました。
『狆を抱く女』：大判の錦絵で、寛政年間に制作されました。
喜多川歌麿
『名所腰掛八景』：大判の錦絵揃物で、寛政後期に制作されました。
歌川広重
『東海道五十三次之内（行書東海道）』：横間判55枚揃の錦絵で、天保12年から天保13年頃に江崎屋辰蔵と合版で制作されました。
『東都名所』：間判の錦絵です。
歌川国芳
『あふみや紋彦』：詳細不明です。
菊川英山
『青楼十二時』：大判の錦絵揃物で、文化9年頃に制作されました。
渓斎英泉
『蘭字枠江戸名所』：横大判の錦絵揃物で、天保年間に制作されました。
歌川国貞
『桟橋の舟送り』：詳細不明です。
『水無月冨士帰夕立』：詳細不明です。

これらの作品は、当時の江戸の風俗や文化を現代に伝える貴重な資料となっています。江崎屋吉兵衛は、これらの浮世絵を出版することで、江戸の文化を豊かにし、人々の生活に彩りを添えました。彼の功績は、浮世絵史において重要な位置を占めています。



参考文献

日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』第3巻 大修館書店、1982年
吉田漱 『浮世絵の基礎知識』雄山閣、1987年
小林忠 大久保純一 『浮世絵の鑑賞基礎知識』 至文堂、1994年

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