江戸英雄

生涯

1903年、茨城県に生まれた江戸英雄は、三井不動産の社長として、同社を「三井御三家」の一角に押し上げた実業家です。その生涯は、激動の時代を生き抜いた不屈の精神と、多岐にわたる分野での貢献で彩られています。

生い立ちと学歴

茨城県の農家に生まれた江戸は、幼少期から向学心に燃えていました。中学校まで毎日10キロを自転車で通学し、水戸高等学校では、寮生活で多くの友人を得て、読書に励み、社会問題に関心を深めました。東京帝国大学法学部では、勉学に励む一方で、関東大震災や結核による療養生活も経験しました。

三井グループでの活躍

大学卒業後、三井合名会社に入社。当初は左派的な思想を持っていたものの、会社組織の変革や財閥解体といった激動の時代を経験する中で、三井グループの再建に尽力します。三井不動産への入社後は、社長として、浚渫埋め立て事業への進出や高層ビルの建設など、数々のプロジェクトを推進しました。

東京ディズニーランド誘致

東京ディズニーランドの誘致にも尽力しました。当初は乗り気でなかったものの、関係者の熱意に動かされ、オリエンタルランド設立に携わります。紆余曲折を経て、最終的には三井不動産主導でディズニーランドの建設を実現させました。このプロジェクトは、彼の決断力とリーダーシップを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

教育・文化への貢献

教育分野にも貢献し、妻と娘が関わった桐朋学園の発展に尽力しました。また、野鳥保護にも関心を持ち、日本野鳥の会の再建にも協力しました。多岐にわたる分野での活動は、彼の幅広い関心と社会貢献への強い意識を表しています。

人物像

江戸は、財界の実力者でありながら、分け隔てなく誰とでも接する人柄でした。政界にも幅広い人脈を持ち、多くの政治家と親交を深めました。また、親身な世話好きとしても知られ、多くの人々から慕われていました。

死去

1997年、94歳でその生涯を閉じました。彼の業績は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

詳細

学生時代

茨城県筑波郡の農家に生まれた江戸英雄は、幼少期から向学心が強く、中学校まで毎日10キロの道のりを自転車で通学しました。水戸高等学校では、全寮制の環境で多くの友人と出会い、読書に没頭する生活を送ります。特に河上肇の『貧乏物語』に感銘を受け、社会問題に関心を抱くようになりました。同級生には、後に新潟県知事や最高裁判事となる人物もおり、互いに切磋琢磨し、親交を深めました。

大学時代と関東大震災

東京帝国大学法学部に入学後、高等文官試験合格を目指して勉学に励みます。しかし、関東大震災で自宅が全焼し、貴重な書籍を失い、生活は一変しました。その後、結核を患い、療養生活を余儀なくされますが、病床でも勉学への情熱を失うことはありませんでした。大学卒業後は、役人になることを考えていましたが、健康上の不安から断念。三井合名会社に入社することになりました。

三井合名から三井不動産へ

三井合名会社では、不動産課や文書課に配属され、組織の変革に携わります。特に、団琢磨理事長の暗殺事件を機に、社会情勢調査部門にも関わることになりました。その後、三井グループの改組や財閥解体といった激動の時代を経験し、三井不動産への入社を決意します。

三井不動産社長として

三井不動産では、社長に就任すると、まず、三井本社の清算を進め、名実ともに三井グループの不動産部門を継承します。そして、浚渫埋め立て事業に進出し、京葉工業地帯の開発に尽力します。高層ビルの建設にも力を入れ、日本初の超高層ビルである霞が関ビルの建設を実現しました。また、宅地開発や住宅分譲など、事業の多角化も進めます。

東京ディズニーランドの実現

東京ディズニーランドの誘致は、江戸の人生における大きな転換点となりました。当初は消極的だったものの、最終的には事業の実現に向けて尽力し、困難な交渉を乗り越え、1983年に東京ディズニーランドをオープンさせました。このプロジェクトは、彼の決断力とリーダーシップを示す象徴的な出来事と言えるでしょう。

晩年と影響

社長退任後は会長に就任し、経営の一線から退きます。しかし、その後も三井グループの発展に尽力し、その影響力は絶大でした。晩年は、教育や文化活動にも積極的に参加し、社会貢献に努めました。彼の遺志は、今もなお、多くの人々に受け継がれています。

三井グループ結束への貢献

三井グループの結束にも尽力し、各社間の連携を強化するため、月曜会や二木会といった組織を立ち上げました。特に、二木会は、三井グループの中核企業が集まる組織となり、グループの結束を象徴する存在となりました。

人脈

政治家や財界人、文化人など、幅広い人脈を持ち、特に、池田勇人や田中角栄とは親交が深く、彼らの仲人を務めたこともありました。また、後藤田正晴の後援会長も務めるなど、政界にも大きな影響力を持っていました。

家族

ピアニストである妻の弘子とともに、子供たちの教育にも熱心でした。娘たちは、それぞれ音楽の道に進み、才能を開花させました。また、小澤征爾との結婚・離婚という波乱を経験した長女にも、温かい愛情を注ぎ続けました。

著書

自身の回顧録や三井グループの歴史に関する著書を多数発表しており、その著作を通じて、多くの人々に影響を与え続けました。

教育への貢献

桐朋学園の発展に尽力し、理事長として学校運営に携わりました。また、東京家政学院大学の設立にも貢献するなど、教育分野への貢献も大きいです。

評価

江戸英雄は、実業家として、また教育者として、幅広い分野で活躍し、社会に多大な貢献をした人物として高く評価されています。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた不屈の精神と、リーダーシップ、そして社会貢献への強い意識を示すものと言えるでしょう。

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