江木欣々

江木欣々（えぎ きんきん）は、明治時代に活躍した法律学者、江木衷の妻として知られる女性です。本名を栄子といい、「欣々」または「欣々栄」という号を用いていました。彼女の出生年は1877年（明治10年）1月30日とする説が一般的ですが、墓誌には1879年（明治12年）生まれと記されています。

欣々の父は、初代愛媛県知事を務めた関新平です。母は関家の女中であった藤谷花で、彼女は麹町の袋物屋「大和屋」の娘でした。欣々には異父弟としてシャープ創業者の早川徳次がおり、異母妹には、ませ子（万世子）がいます。大正時代には、九条武子、柳原白蓮と並んで「大正三美人」と称されるほどの美貌の持ち主でした。

波乱の幼少期から花柳界へ

欣々の幼少期は、複雑な家庭環境の中で過ごしました。父・関新平が大審院判事として東京に単身赴任中、女中の藤谷花との間に生まれたのが栄子、つまり欣々でした。その後、栄子は京橋区木挽町の古道具屋に養女として出されますが、5歳ごろには本所緑町の顔役である田岡某に引き取られました。実母とは生涯会うことがなかったといいます。養父の病死後、養家が困窮したため、彼女は16歳で新橋の花街で半玉（見習い芸者）として働くことになります。

結婚と社交界での活躍

新橋で半玉として働いていた栄子は、16歳で九州の細川家の元家老職であった50代の有吉立愛男爵に見初められ、正妻として迎えられました。しかし、結婚生活はわずか1年余りで終わりを迎え、夫は病死。栄子は再び花柳界に戻り、神田明神下の講武所で芸者として働くことになります。この頃には、その美貌が評判となり、多くの人々を魅了しました。

その後、栄子は講武所で開かれた弁護士たちの宴会で、19歳年上の江木衷と出会います。二人は実は顔見知りで、江木衷が東京大学の法科学生だった頃、下宿先に洗濯物の御用聞きとして訪れていたのが、若い日の栄子でした。二人は間もなく結婚し、結婚後は自宅で関係者を集めて頻繁にパーティーを開き、それが自然と社交場となっていきました。欣々は詩、書、画、篆刻、謡曲など多岐にわたる趣味を持ち、その才人ぶりを発揮して社交界の華形として活躍しました。避暑地として知られる軽井沢では、乗馬姿が有名で、多くの人々を魅了しました。

晩年と最期

1925年（大正14年）に夫の江木衷と死別した後、1930年（昭和5年）に大阪の異父弟・早川徳次の家で首吊り自殺を遂げました（別の説では、京都の宿で亡くなったとも言われています）。

親族と関連人物

欣々の異母妹である悦子は、関場不二彦と離婚後、江木鰐水の子で江木写真館を創設した江木保男の後妻となりました。また、ませ子は美人画家として知られる鏑木清方の傑作「築地明石町」のモデルとして有名で、江木保男の先妻との子である江木定男に嫁ぎました。ませ子の子には、猪谷妙子（猪谷善一の妻）や、双子の江木武彦・文彦がいます。さらに、妙子の子には、戦後の国際女優として活躍した谷洋子がいます。

武道にも秀でた才女

江木欣々は、武道にも造詣が深く、十剣大神流の粕川廩子より女式の柔術を学び、1917年4月5日には免許皆伝を受けています。


江木欣々の生涯は、美貌と才能に恵まれながらも、激動の時代の中で翻弄された女性の姿を描いています。彼女の波瀾万丈な人生は、多くの人々に語り継がれるべきでしょう。

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