江沢譲爾

江沢譲爾（えざわ じょうじ）

江沢譲爾は、1907年5月20日に東京市芝区（現在の東京都港区）で生まれ、1975年1月23日に亡くなった日本の地理学者です。経済地理学を専門とし、その分野の発展に大きく貢献しました。経済地理学会の初代会長を務めたことでも知られています。

生涯

江沢は、1924年に府立一中（現在の東京都立日比谷高等学校）を卒業後、東京商科大学（現在の一橋大学）に進学しました。1930年に同大学を卒業し、1955年には一橋大学から経済学博士の学位を授与されています。

大学卒業後は、東京商科大学の予科教授として教鞭を執りました。しかし、第二次世界大戦後、教育職員適格審査委員会によって、金子鷹之助、米谷隆三、常盤敏太とともに公職追放の処分を受け、一時的に教職を離れることになります。

その後、1948年に財団法人運輸調査局資料課長、1949年には同局主任調査役を歴任し、研究活動を再開します。1951年には神奈川大学法経学部の教授に就任。さらに、1955年には専修大学社会科学研究所の教授となり、研究と教育に力を注ぎました。1968年に定年退職を迎えましたが、その後も嘱託教授として専修大学に残り、後進の指導にあたります。1969年には経済地理学会の初代会長に就任。また、専修大学社会科学研究所長も務めました。1975年、専修大学在職中に逝去。その功績を称えられ、勲三等瑞宝章を受章しました。

研究内容

江沢譲爾の研究は、経済地理学の中でも特に、立地論や工業集積論といった分野に重点が置かれています。経済活動がどこに立地し、どのように発展していくのか、そのメカニズムを解明しようと努めました。

彼の著書は、理論的な考察に基づいたものが多く、経済地理学の基礎を築いたものとして評価されています。特に、『経済立地学 その論理的構成』や『工業集積論 立地論の中心問題』などは、彼の代表的な著作として知られています。

著書一覧

江沢は、数多くの著作を発表しており、その学問的業績は多岐にわたります。以下は、主な著書の一部です。

『経済立地学 その論理的構成』（1935年）
『独逸思想史研究』（1936年）
『経済地理学の基礎理論 自然・技術・経済』（1938年）
『黄河流域に於ける農業形態の経済地理的考案 北支経済空間の分析』（1939年）
『ハウスホーフアーの太平洋地政学』（1941年）
『経済地理』（1942年）
『国土計画の基礎理論』（1942年）
『地政学研究』（1942年）
『国土の精神』（1943年）
『地政学概論』（1943年）
『地理 その基本問題』（1943年）
『南方地政論』（1943年）
『アメリカ資源論』（1948年）
『経済立地論 立地構造の純粋経済学的研究』（1952年）
『工業集積論 立地論の中心問題』（1954年）
『立地論序説』（1955年）
『産業立地論と地域分析』（1962年）
『近代経済学の大系』（1966年）
『経済立地論の体系』（1967年）
『近代経済学の論理』（1971年）

共編著・翻訳

江沢は、共編著や翻訳にも携わっており、その活動は多岐にわたります。共編著には、『国防地政論』、『経済立地論概説』、『経済立地論の新展開』などがあります。また、翻訳では、デイルタイの『文芸復興と宗教改革』、フリードリッヒ・シュレーゲルの『ルチンデ』、アルフレート・ヴエーバーの『工業分布論』、ヴァルター・クリスタラーの『都市の立地と発展』などを手掛けました。

記念論集・論文

江沢の業績を記念して、『経済立地の理論と計画 伊藤久秋教授古稀江沢譲爾教授還暦記念論文集』が刊行されています。また、論文としては、『工業集積論 : 立地論の中心問題』があり、一橋大学に経済学博士号を提出する際に発表されています。

脚注

詳しい情報については、以下の外部リンクをご参照ください。

* 柴田陽一「江澤譲爾の地政学に関する再検討」『人文地理学会大会 研究発表要旨』2018年


江沢譲爾は、経済地理学の分野において、その理論的基盤を築いた重要な人物として、現在でもその研究が参考にされています。

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