池之坊満月城火災

池之坊満月城火災

1968年（昭和43年）11月2日未明、兵庫県神戸市（当時）の有馬温泉にあった旅館「池之坊満月城」で発生した火災は、死者30名、負傷者44名という甚大な被害をもたらしました。

火災発生の背景

池之坊満月城は、収容人数800名を超える大規模な旅館でしたが、長年の増築により館内は複雑に入り組んだ構造となっており、避難経路が確保しにくい状況でした。また、自動火災報知機の設置が一部に留まっていたほか、消火器や消火栓、避難設備なども不十分であり、消防署から事前に改善指導を受けていたにもかかわらず、実際には適切な対策が講じられていませんでした。火災発生当時、旅館では新たな棟の建設も進められていました。

火災の発生と被害

午前2時30分頃、宴会場「仁王殿」2階のサービスルームから出火。深夜の出火に加え、前述したような防火体制の不備、複雑な建物構造、可燃性の内装材による有毒ガスの発生やフラッシュオーバーなどが重なり、避難は非常に困難を極めました。火災に気づくのが遅れた宿泊客も多く、煙が自室に侵入して初めて火災を知ったという人もいました。

火災は午前5時45分頃に鎮火しましたが、本館を含む6棟、計6550平方メートルが全焼しました。犠牲者の多くは、富山県からの団体客や新婚旅行中の夫婦でした。この火災は、多くの人々に深い悲しみと衝撃を与えました。

火災後の経過

旅館の経営者は防火管理責任を問われましたが、裁判では執行猶予付きの有罪判決にとどまりました。その後、火災を免れた建物や新築された建物で営業を再開しましたが、火災の影響による経営の低迷や、阪神・淡路大震災による被害も重なり、2007年頃から無期限休業となり、宿泊施設としては事実上廃業しました。現在、法人としては存続しており、跡地では時間貸し駐車場が運営されています。温泉寺境内には、火災の犠牲者を弔う慰霊塔が建立されています。

火災の教訓

この火災を契機に、「旅館ホテル防火安全対策連絡協議会」が設立され、旅館・ホテルの防火対策が見直されることになりました。また、池之坊満月城と同様に防火体制の不備を指摘されていたホテルニュージャパンでも、後に火災が発生し、多くの犠牲者を出しています。

関連情報

火災の年表: 過去に発生した主な火災事故について参照できます。
既存不適格: 建築基準法に適合しない既存の建物に関する情報です。
* 関連する火災事故: 磐光ホテル火災、川治プリンスホテル火災、ホテルニュージャパン火災、ホテル大東館火災など、類似の火災事故に関する情報です。

この火災は、防火対策の重要性を改めて認識させるとともに、多くの教訓を残しました。二度とこのような悲劇が繰り返されないよう、安全な社会の実現に向けた取り組みが求められています。

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