池田仲博

池田仲博：華族、貴族院議員、そして陸軍軍人としての生涯

池田仲博（1877年8月28日 - 1948年1月1日）は、明治から昭和にかけての激動の時代を生きた人物です。彼は華族（侯爵）、貴族院議員、そして陸軍軍人（陸軍歩兵中尉）という、多様な顔を持っていました。鳥取池田家第16代当主としての側面も持ち合わせています。

生い立ちと家督相続

池田仲博は、徳川慶喜の五男として誕生しました。初名は博（ひろし）といい、佐野源次郎のもとへ預けられた時期もありました。その後、徳川邸に戻り、兄と共に東京へ移り住み、学習院に入学します。彼の人生における大きな転機は、1890年に訪れます。従兄にあたる池田輝知が嗣子なくして亡くなったため、その次女である亨子（みちこ）と結婚し、婿養子として池田侯爵家を相続・襲爵することになったのです。この時、輝博と改名しましたが、後に明治天皇の皇子である輝仁親王と一字が重なることから、鳥取藩初代藩主・池田光仲の名から一字を取り、仲博と改名しました。

北海道での農場経営

華族としての活動だけでなく、池田仲博は実業家としての顔も持っていました。1896年、同族の池田源と共に北海道の十勝地方に進出し、広大な原野の貸付を受けて池田農場を開設しました。その規模は約300万坪にも及び、現在の池田町発展の礎を築いたと言えるでしょう。

軍人としての道

池田仲博は、学習院卒業後、陸軍士官学校に進み、軍人としての道を歩み始めます。陸軍士官学校を卒業後、陸軍歩兵少尉に任官し、第一師管軍法会議判士、陸軍幼年学校生徒隊中隊付などを歴任しました。その後、予備役に編入されています。

貴族院議員としての活動

1902年、池田仲博は貴族院議員に選出され、政界に進出します。侯爵議員として、火曜会に所属し、国政に携わりました。貴族院議員としては、1946年までその職を務め上げました。

仁風閣の建設

池田仲博の名前を後世に伝えるものとして、鳥取市の観光名所である仁風閣があります。1907年、当時の皇太子嘉仁親王（後の大正天皇）の山陰行啓の際の宿泊施設として、鳥取城跡の扇御殿跡に自身の別邸を建設しました。この建物が仁風閣であり、その名は行啓に随行した東郷平八郎によって命名されました。ルネサンス様式を取り入れた美しい建物は、現在も多くの人々を魅了しています。

文化人としての側面

池田仲博は、俳句にも造詣が深く、高浜虚子の指導を受けていました。また、父である徳川慶喜と虚子を引き合わせたこともあったそうです。文化的な交流も積極的に行っていたことが伺えます。

戦後と晩年

第二次世界大戦後、池田仲博は公職追放となり、貴族院議員を辞職。華族制度の廃止に伴い、爵位を失いました。1948年1月1日に逝去し、その墓所は一時東京の多磨霊園にありましたが、後に鳥取市の大雲院へ改葬されました。

栄典と家族

池田仲博は、その功績により、従四位、従三位といった位階や、勲四等瑞宝章、旭日小綬章などの勲章を授与されています。また、徳川慶喜を実父に持ち、池田輝知を義父に持つという複雑な家系に生まれました。妻は池田輝知の次女である亨子で、多くの子女に恵まれました。その子孫は、現在も各界で活躍しています。

池田仲博は、明治から昭和という激動の時代を、華族、貴族院議員、陸軍軍人、そして実業家として生きた人物でした。彼の生涯は、日本の近代史を語る上で欠かせない要素の一つと言えるでしょう。

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