池田彌三郎

池田彌三郎（いけだ やさぶろう）について

池田彌三郎は、1914年12月21日に東京市京橋区（現・東京都中央区）に生まれた日本の国文学者、民俗学者、そして随筆家です。彼のユニークなキャリアと業績は、文学と民俗学の交差する領域での深い洞察を提供しています。

経歴と学問への道

池田は、銀座の天麩羅屋「天金」の次男として育ちました。彼の学問への道は、京橋区立泰明小学校から始まり、その後、東京市立第一中学校を経て、1931年4月に慶應義塾大学経済学部予科に入学しました。ここで彼は井筒俊彦や加藤守雄と出会い、彼らとともに文学の世界に足を踏み入れました。

1934年には文学部国文科に転科し、民俗学の巨星である折口信夫に学び、後に戸板康二らと共に折口が主宰する短歌結社「鳥船社」に参加します。1937年には慶應義塾大学文学部国文科を卒業しました。

教員としての活動とメディアへの進出

慶應義塾大学での教授としてのキャリアも、池田の特異な点の一つです。1957年から1963年にかけて、NHKのクイズバラエティ番組「私だけが知っている」などに出演し、タレント教授として名を馳せました。

彼の発信する視点は、学問だけでなく、社会問題にも目を向けたものでした。特に1962年に発表した「大学女禍論」では、早稲田大学の教員である暉峻康隆と共に女子学生に関する問題を提起し、広く議論を呼び起こしました。

晩年と受賞歴

池田は慶應義塾大学を定年退職した後、洗足学園魚津短期大学の教授に就任します。1977年には紫綬褒章を受賞し、その学問に対する貢献が認められました。しかし1982年、その肝硬変が悪化し、67歳でこの世を去りました。彼の墓所は鎌倉霊園にあります。

エピソードと個性

池田の個性的な一面は、教育者としての姿勢に表れています。洗足学園魚津短期大学国文科新設時、工学部長の森為可から主任教授に就任するよう打診された際、彼は軽やかに「手を貸してくれ、ああ、やりますよ」と返事をし、そのまま受け入れました。また、独自の原稿用紙を特注で作成して使用するなど、教育現場においてもその合理性を追求しました。

さらに、出願時に国語の試験を行うことが失礼であるとして早くから国語を廃止し、小論文を導入するなど、教育理念にも独自の考え方を貫いていました。彼は、英語の試験で国語力が評価できると信じていたため、慶應義塾大学文系において国語の試験が存在しないのも、彼の影響によるものであると言われています。

著作

池田の著作は、彼の思想や研究を反映した重要な資料です。代表的な著書として、2007年に出版された『世俗の詩・民衆の歌 池田彌三郎エッセイ選』や、2015年から2016年にかけて出版された『折口信夫芸能史講義 戦後篇』などがあります。また、1979年から1980年には全集として『池田彌三郎著作集』（全10巻）も刊行されており、幅広いテーマに渡る洞察を提供しています。

池田彌三郎は、日本の国文学と民俗学の分野において忘れがたい足跡を残した人物であり、彼の理念や業績は今なお多くの人々に影響を与えています。

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