池谷薫 (アマチュア天文家)

池谷 薫

（いけや かおる、1943年11月30日生 - ）は、日本の高名なアマチュア天文家であり、傑出したコメットハンター（彗星捜索家）として知られる人物です。静岡県の出身です。

彗星捜索と発見の偉業

池谷氏は1962年から彗星捜索活動を本格的に開始しました。そして翌年の1963年1月3日の未明、自作した天体望遠鏡を用いて、自身の名を冠した初めての新彗星（池谷彗星、符号 C/1963 A1）を発見する快挙を成し遂げました。この最初の発見に続き、氏はその後5年間にわたって毎年、計5個もの新彗星を発見するという驚異的な実績を積み上げました。

特に広くその名を知られることとなったのは、1965年に関勉氏とほぼ同日に発見した池谷・関彗星（符号 C/1965 S1）です。この彗星は、大彗星となり世界中の天文愛好家や一般の人々の注目を集めました。

彗星だけでなく、超新星の発見にも貢献しており、1980年代には銀河 NGC3675とM58の中に超新星を発見しています。

長期にわたる活動と新たな発見

池谷氏の彗星捜索は、最初の連続発見期にとどまらず、長い年月を経て再び結実を見ることになります。2002年2月1日には、中国のアマチュア天文家である張大慶氏と共に、周期彗星である池谷・張彗星（符号 153P/Ikeya-Zhang）を同時発見しました。これは、1967年に発見された池谷・関彗星（符号 C/1967 Y1）以来、実に35年ぶりとなる新彗星の発見であり、その持続的な情熱と探求心が示された出来事でした。

また、近年では映画『ガラスの使徒』において、その人物像がモデルの一つとなったことも知られています。

2010年頃においても、氏は反射望遠鏡の反射鏡研磨を本業とする傍らで、精力的に彗星捜索を続けていました。同年11月3日には、新潟県の村上茂樹氏とそれぞれ独立に、新たな彗星である池谷・村上彗星を発見しました（池谷氏は3日に、村上氏は4日に発見）。この発見は、池谷氏にとって2002年の池谷・張彗星以来8年ぶりの快挙であり、通算7個目の新彗星発見記録を更新するものでした。

本業とその他の活動

池谷氏はアマチュア天文家として著名であると同時に、光学技術の専門家としても活動しています。自身が設立した「池谷光学研磨研究所」を拠点に、天体望遠鏡の心臓部ともいえる反射鏡の製作・研磨を手掛けており、個人の所有する望遠鏡から公開天文台に設置されるような大型の望遠鏡に至るまで、多くの反射鏡を生み出しています。その技術力は国内外で高く評価されています。

また、その功績が認められ、第16回NHK紅白歌合戦には中部地方の地方審査員として出演した経験を持ちます。その際、「新しい彗星の発見者」として紹介されたことも、当時の社会における彗星発見への関心の高まりと、池谷氏の存在が広く知られていたことを物語っています。

著書（監修）

* 『えびなみつるの完全図解天体望遠鏡を作ろう』（えびなみつる 著, 池谷薫 監修、誠文堂新光社、2002年）

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