沖田芳夫

沖田芳夫の生涯

沖田芳夫（おきた よしお、1903年3月28日 - 2001年4月28日）は、日本陸上競技の名選手であり、その後指導者としても多くの功績を残しました。彼はかつてアムステルダムオリンピックに出場した陸上男子円盤投とハンマー投の代表選手でもあり、さらに円盤投とハンマー投の日本記録保持者として名を馳せました。また、早稲田大学競走部の主将や監督、日本陸上競技連盟の審議員としても活躍し、陸上競技界において重要な役割を果たしました。

彼は広島県広島市の向洋大原（現南区向洋大原町）で生まれ、旧制広島一中（現在の広島県立国泰寺高等学校）を経て、早稲田大学商学部を卒業しました。広島一中では、同級生の織田幹雄と親友であり、同じく陸上競技に情熱を注いでいました。中学時代はテニス部に所属していましたが、運動神経を活かして72キロの体格を生かした砲丸投で全国中等学校大会に出場し、見事に優勝を果たしました。

1924年に早稲田大学に進学すると、沖田は本格的に陸上競技を始め、短期間で日本のトップ選手として名を馳せることとなります。その年、第2回早慶陸上で円盤投部門で優勝し、続いて6回大会まで4連覇を達成しました。この時期、円盤投のレベルを引き上げた彼の努力は、多くの後輩選手に影響を与えました。

そして1928年、在学中の沖田はアムステルダムオリンピックに参加し、また日本インカレで史上初めて砲丸投・円盤投・ハンマー投の3冠を達成し、彼はその名を「投てき王」として知られるようになりました。早稲田大学では競走部の主将を務め、織田、沖田、住吉耕作の3人は広島出身の名選手としてこの役割を引き継ぎました。

沖田は時に「モダンボーイ」とも称され、夜な夜なダンスホールに通う姿が印象的であり、大食漢としても知られたため、その豊かな人間性は周りの人々にも深い印象を与えました。沖田は現役選手として日本陸上選手権で通算9回優勝し（円盤投5回、ハンマー投4回）、日本記録を15回更新するという驚異的な成績を残しました。

引退後は後進の指導に力を注ぎ、1932年のロサンゼルスオリンピックでは日本選手団の指導員として、1936年のベルリンオリンピックではヘッドコーチとして日本陸上界を支えました。戦後は母校の早稲田大学競走部の監督を任され、1957年、1958年には日本学生陸上競技対校選手権を制覇するなど、その指導力を発揮しました。

長年にわたりOB会長を務めた沖田は、穏やかで人情味あふれる性格で後輩たちから敬愛されました。彼は1973年に勲四等瑞宝章を受賞し、90歳の時、盟友である織田に請われて宮崎で開催された第10回世界ベテランズ選手権にも出場。男子90-94歳クラスで金メダルを獲得するなど、その健康と運動能力は驚異的でした。

2001年4月28日、沖田芳夫は98歳で肺炎により逝去しました。彼の遺品は後に義妹の熊坂久美子により早稲田大学大学史資料センターに寄付され、現在もそこで保管されています。彼の生涯を通じて、沖田芳夫は日本陸上競技の発展に多大な貢献をし、その存在は今も多くの人々に記憶され続けています。

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