沖縄怪談逆吊り幽霊 支那怪談死棺破り

概要

映画『沖縄怪談逆吊り幽霊 支那怪談死棺破り』は、1962年6月13日に劇場公開された、日本と台湾が協力して製作された怪談作品です。カラー・シネマスコープ、上映時間は88分。製作および配給は日本側の大蔵映画が担当しました。

本作の企画は、1960年に新東宝の社長を解任された大蔵貢氏が設立した大蔵映画に対し、台湾の映画プロデューサーから合作の申し出があったことに端を発します。当時、台湾では日本映画の輸入に対して高額な関税が課されていたため、台湾側が製作費の51%を出資し、形式上は台湾映画として製作、大蔵映画が日本国内での配給権を獲得するという、変則的な合作形式が取られました。しかし、実際の製作作業は全て日本国内で行われ、台湾からの参加は『支那怪談』で主演を務めた白蓉と梅芳王の二名のみに留まり、台湾側のスタッフは名義上の参加に過ぎませんでした。監督は小林悟氏がほぼ単独で務めています。音楽は大蔵社長の実弟にあたる歌手の近江俊郎氏が担当しましたが、監督の証言によると、録音には大蔵氏が経営していたキャバレーの生バンドが起用されたというエピソードも伝えられています。

作品内容

『沖縄怪談』のパートは、沖縄に伝わる真嘉比の逆立ち幽霊伝説から着想を得たと見られますが、その物語の根幹は日本の古典怪談『四谷怪談』との類似性が指摘されています。タイトルの表記から、『沖縄怪談』と『支那怪談』という二本のオムニバス作品のように受け取られがちですが、実際は『沖縄怪談』本編中に劇中劇として『支那怪談』が挿入される、純然たる一本立ての構成となっています。にもかかわらず、公開当時のポスターでは、『支那怪談』と『沖縄怪談』のタイトルを二段に分けることで、同時上映の外国映画と合わせてあたかも三本立てであるかのように観客をミスリードさせるプロモーションが行われたことも特徴です。

ストーリー

物語は、突如原因不明の病で床に伏した夫・健生が、美しい妻・玲子の貞操を疑い、問い詰める場面から始まります。健生は玲子に対し、中国に古くから伝わるという怪談を語り聞かせます。その内容は、自身の死を装った夫が、葬儀当日に他の男に走った妻を仙術の力で殺害するというものでした。その話を聞いた玲子は、夫への貞節を誓うため、自ら顔に傷をつけます。しかし、病から快復した健生は、顔に傷ができた玲子を次第に遠ざけるようになり、バーの女性と不倫関係に陥ります。そして遂には、玲子を手にかけ殺害してしまいます。しかし、殺された玲子は逆吊り幽霊となって現世に蘇り、健生を呪い殺すのでした。

主なキャスト

沖縄怪談逆吊り幽霊

玲子：香取環
朱美：扇町京子
比嘉健生：大原譲二
大場：御木本伸介
玄海和尚：九重京司
井波：若宮隆二
医者：菊地双四郎
看護婦：大原栄子
営業部長：原聖二
警察官：河野信三、三浦敏夫
バーテン：石井康雄
敏子：松本洋子

支那怪談死棺破り

田花夫人：白蓉
未亡人：一条美矢子
荘周：梅芳王
王子：山本浩
秋蘭：小野彰子
花畠の美女：立見秀子
女中：鈴木洋子
若い男：江波志郎
従者：白川昌雄
下僕：酒匂真直、小坂光広
* 侍女：佐々木迪子、白石冬美

フィルムの発見と映像商品

本作のフィルムは、公開後長期間にわたりその所在が不明となっていましたが、1996年、大蔵映画大阪支社の倉庫から、他の怪談映画のフィルムと共に発見されました。
発見されたフィルムをもとに、2003年にはハピネットピクチャーズよりDVDソフトが発売されています。この際、『怪談バラバラ幽霊』、『生首情痴事件』という他の大蔵怪談作品二本とセットになった『大蔵怪談傑作選 THE SPECIAL COLLECTOR’S BOX』も同時にリリースされました。

本作は、当時の合作事情やB級映画、エクスプロイテーション映画といった文脈で語られることもあります。

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