沖野岩三郎

沖野岩三郎は、明治9年（1876年）1月5日に和歌山県で生まれ、昭和31年（1956年）1月31日に生涯を閉じた小説家、そして牧師です。彼は、宗教家としての側面と文学者としての側面を併せ持ち、多岐にわたる作品を世に送り出しました。

和歌山師範学校を卒業後、小学校の教師として教鞭を執る傍ら、小説の創作を始めます。22歳という若さで校長に就任。この頃、宣教師との出会いをきっかけにキリスト教に入信しました。明治学院神学部で神学を学んだ後、新宮日本基督教会の牧師となります。和歌山では、大石誠之助、内山愚童、新村忠雄らと交流を深めますが、大逆事件に連座しそうになりながらも、処刑を免れました。

1917年、沖野は作家としての道を歩むため上京。大逆事件で失われた同志たちの真実を伝えることを使命と感じ、『煉瓦の雨』や『宿命』といった作品を発表しました。特に『宿命』は、大阪朝日新聞の懸賞小説に当選し、宗教文学の分野で独自の地位を確立しました。1918年には、芝三田統一基督教会の牧師に就任する傍ら、児童文学作家としても活動し、子供たちから「童話ノオジサン」として親しまれました。彼の作品『星は乱れ飛ぶ』は、映画化もされています。

東京の自宅を空襲で失った沖野は、終戦後の1945年、別荘があった軽井沢へ移住します。1955年には、軽井沢の星野温泉に日本基督教団浅間高原教会（現在の軽井沢高原教会）を開設し、初代牧師となりました。晩年は糖尿病により視力を失いますが、熱心な布教活動を続け、「軽井沢の聖者」として人々に慕われました。1956年1月31日、軽井沢の別荘で永眠。彼の墓は多磨霊園にあります。

沖野岩三郎は、小説、童話、宗教書など、生涯にわたり数多くの著作を残しました。

主な著書

宿命
沖野岩三郎著作集
渾沌
恋の笈摺
頬白の歌
日本基督新教縦断面
地に物書く人
失はれし真珠
薄氷を踏みて
星は乱れ飛ぶ
白路を見つめて
生れざりせば
金の釣瓶
黒船物語
悲みの極み
私は生きてゐる
日本の児童と芸術教育
どんぐり山
笛吹川
求め得ぬ嘆き
宿命論者のことば
労働の少年
かなしき仮面
父恋し
孝行息子
海を越えて
牧童から大王になった人の話
地球は曇る
赦し得ぬ悩み
世界立志物語
長篇童話集
ユートピア物語
娼妓解放哀話
太平洋を越えて
欧洲物語
育児日記から
聖女へれん・けらあ
童話の創作と実演
日本神社考
迷信の話
日本建国史考
宛名印記
大人の読んだ小学国語読本
歸って來たロビンソン
虹のをぢさん
紀南大平記
平田篤胤
鹿持雅澄とその時代
八沢浦物語
平田篤胤とその時代
書き改むべき日本歴史
聖書物語
キリスト教物語
いづこへ行く
森の祈り
山の子ざる
沖野岩三郎自伝
明治キリスト教児童文学史

彼の作品は、時代を超えて、今もなお多くの人々に読み継がれています。

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